ぐるぐるシュルツ

サスペリアのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

サスペリア(1977年製作の映画)
4.0
懐かしくて、その世界を覗きたくなる。
動く身体と叫ぶ顔。顔。顔。

〜〜〜

とうとう見てしまいました!
映画館という暗闇と
サラウンドで見たのもまた良かった!

始まりの赤色の空港、
ギロチンのような死を思わせる自動ドア。
豪雨、森と屋敷。
何か秘密の言葉を叫び、逃げていく女。
そして象徴的な最初の死。
安ホテルのような、ボロ遊園地のような建物。
赤と緑の単色光。
この古めかしさに感じる不気味さは、公開当時にもあったのだろうか。
それでも殺人表現からしてみると、当時としては、目新しく斬新なものだったのかもしれないですね。

着目したのは、
リメイクでは大胆に描かれていた暴れる身体。
流石にそんなにグロテスクではないもの、
何度も描かれていましたね。
リメイクでは、キリキリ、引きちぎれるような痛みを伴っていたバレエのシーン。
この、倒れそうになりながら踊らなくていけないバレエに加えて、
今作では、
サラとスージーのプールでの秘密話での立ち泳ぎや、
床で暴れるコウモリ、殺しにくる死体など。
そのどれもが外部の力に抗えず、暴れる躯体が印象的。
それに、魔女に惑わされるスージー自身が重なっていきます。

そのほか、意外に強調されていたのが、
流れていく水の表現。
冒頭の川や排水溝、手洗い場やトイレ、窓に流れる水滴が影となって壁に伸びていく。
流水とはシンプルだけど、こんなにも緻密で、CGがなくとも豪華で情報量が豊かな質感だと改めて感じますね。
そして、抗えず吸い込まれていく水の様子も、
やっぱりスージー自身や観客に重なります。

それに面白いのが、
舞台演劇を見ているような気になったことですね。
三人称での視点で多く、
怯える姿のみで恐怖を演出する。(いや怖くはないけれど)
豪華で壮大な舞台装飾のような建物や部屋が
一層それを喚起させます。

でも、それよりも、
この映画を見ながら
途中から気づいてしまったのは、
昔の洋物のホラーゲームをしている
ノスタルジーでした。
もうこれしかないぐらい。
いやぁなんだか懐かしくて心地よい。
「アローンインザダーク」や「クロックタワー」というゲームの世界観まんまなんです笑

不気味にチープなバロック音楽や、
徹底した3次元の固定カメラ。
理不尽なデッドエンド、
謎解きの屋敷や魔女の秘密、
ラスボスとの戦いと脱出、
そしてエンドロール笑

おそらくこちらの作品に影響されて開発されたゲームだったのでしょうけれど、
僕としてはあちらが先だったので、
なんだか終始愉快で、不思議と心地よかった。


窓に映る怯える顔、精神分析学会のビルの上からのショット、広場での死。

なんだか絶妙な距離感。
切り返しショットばかりで
安易に感情移入させるのではなく、
その物語を感じる映画として、
一つのシーンを一つの絵として、
ゴブリンのクールな音楽や足音付きで体感できました。
特に、
秘密の部屋の扉を開いた瞬間に流れるテーマ曲。
もう天才としかいえないタイミング。
今作でのベストシーン。

そして
コレをアレにする、ルカ監督の想像力よ。
たまらない。