あまね

パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たちのあまねのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『その呪いを解くのは、愛――。』
このコピーが無性にむず痒くて、ずっと見なかった作品。
思い切って見てみたらーーもっと早く見れば良かったよコンチクショー!!っていうくらい、面白かった。今まで損したー! もっとべたべたの恋愛映画だと思ってたのに……悔しくも嬉しい誤算だ。

18世紀のカリブ海を舞台にした《海賊映画》。
説明はもう、これに尽きるだろう。
ストーリーはあるし、もちろん面白いのだが、この作品を語るなら『海賊映画』の一言でいいと思ってしまう。
ヒーロー&ヒロインがいて、悪役(海賊)がいて、味方(いい海賊)がいる。観る前はそんな風にキャラクターイメージを持っていたが、観た後の感想は、ヒーロー&ヒロイン(海賊)、悪役(海賊)、海賊(海賊)、だ。
どいつもこいつも癖があって、荒くれで、大胆で、裏切ったり裏切られたり、騙したり騙されたりのまるで乱戦。
海賊と財宝、呪い、身分違いの恋といった王道展開なのに、登場人物は全員海賊気質で。唯一違うのはイギリス海軍くらいだが、さして重要な役どころじゃないので、やっぱり主要人物全員が海賊なんじゃないかとしたり顔で頷いてしまったりするのだ。

途中、ヒーロー&ヒロインの言動が鼻につき、違和感が拭えない場面があった。
紳士と淑女であるはずなのに、裏切ったり騙したりと、どうにも「らしくない」。おまけに、いくら跳ねッ返りとはいえ、土壇場での操船指示とか度胸とか、貴族の令嬢と鍛冶職人には無理だろうと思える展開も。
そこでいったん気持ちが冷めかけたが、後半で『あ、この人たち海賊だ』と思ったら、違和感はむしろ味わいに変わった(笑)。
そう、紳士と淑女じゃない。二人とも気性は海賊だ。
終盤からラストに向かう展開は胸熱だった。

そしてやっぱりすごいと思ったのは、ジャック・スパロー。即ちジョニー・デップの演技。
敵なのか味方なのか、狡猾なのか馬鹿なのか、無邪気なのか打算的なのか……ずっと見ていてもこれと決めかねてしまうくらい、飄々とした掴みどころのない、でも憎めない愛すべきキャラなのだ。
ジャックはどこまでも自由で、海賊だ。映画の中の役回りだけではなく、ジャック・スパローというキャラクター自身が、映画の枠組みを超えて自由だと感じた。
そしてもうグッと心に刺さったのが、最後のジャックの一言。雄叫びと言ってもいい台詞。船を取り戻したジャックがかける号令が、映画全体を貫いていると感じて胸に迫った。
曖昧でつかみどころがないジャックだったが、最初から一貫してぶれていない、これがジャックなんだと一瞬で納得させられる台詞。その口調。ジョニー・デップすごい……めちゃくちゃすごい演技力。
ジャック・スパローという人物がどんな想いだったかを、万の言葉よりも雄弁に語った演技だった。

ただ、惜しむらくは大団円過ぎたこと。
ハッピーエンドに文句も異論もないが、海軍が物分かり良すぎた気がする。
ちょっとご都合主義だと感じてしまい、☆-1となった。
とはいえ、めいっぱい楽しめる作品。面白かった!
睡眠時間捧げても後悔はない!!
あまね

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