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恋人たちの失われた革命のBaadのレビュー・感想・評価

恋人たちの失われた革命(2005年製作の映画)
4.5
事前に当時そのままの映像であるという予備知識は持っていたが、観てみて、実際にも60年代の映画をそのまま今見ているような錯覚に陥った。

「大人は判ってくれない」の青年版五月革命とその後編、それをスクリーンを通して今現在目撃しているかのような臨場感のある映像である。しかも映像と演技の質は、日本映画の黄金時代やハリウッドの50年代と比べても全く引けを取らない。

この時期を題材にした映画は日本のものでは何本か観ているがそれら全てがまだるっこしく、あるいは、懐古的に見えてしまうような、直裁で力のある映像である。こういう映像はスタンダードサイズで観るのが好きなのだけれど、正しく、モノクロスタンダードサイズなのも嬉しい。

私自身が五月革命に多少なりとも興味を持ったのはつい数年前なのだけれど、それを理解するためのプラットフォームを手に入れたようでさらに嬉しい。

もう一つ嬉しかったのは役者さんたちの容姿の綺麗さだ。美人とかそういうことではなく、カメラに映える綺麗さ。
当時のフランスの警察や軍隊等行政システムの見せ方も「大人は判ってくれない」を彷彿とさせて興味深かった。

あれやこれやで前半は本当に見応えがあってこのまんま最後までいけば大満足、になるはずが、恋愛描写のほうですこし飽きてしまった。
そちらももちろん素晴らしかったのだけれど、真摯で幸福な恋愛はパターンが知れているので、やはり1時間近くがその描写に割かれているとさすがに長く感じる。この辺は、観る人に取ってどちらが目新しいかで評価が変わってくる所かもしれない。

蛇足ですが、この映画に限らず、この時代のよく出来た青春(あるいは思春期)映画を見ると本当に今の時代は子供が大人になる試行錯誤が出来にくい時代だということがよく分かります。

(2007-05-01記)
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