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病院坂の首縊りの家のRyuのレビュー・感想・評価

病院坂の首縊りの家(1979年製作の映画)
3.7
昭和26年。探偵の金田一耕助はアメリカに行こうとしており、パスポート用の写真を撮るために写真館を訪れた。金田一はその写真屋の主人に「誰かに命を狙われているから調査してほしい」と依頼を受ける。その日、若い女性が写真館を訪ねてき、結婚写真の出張撮影を頼まれ、若主人がとある廃屋で写真を撮影する。そして写真が出来上がる日、金田一は写真館の主人、若主人、弟子と共にその廃屋を訪れると、吊り下げられた男の生首を発見する。

監督 市川崑×主演 石坂浩二の金田一耕助シリーズ第5弾。
冒頭から原作者 横溝正史が夫婦で登場。けっこうガッツリ出演してましたね。横溝本人と同じ推理作家という役柄です。
オープニングは今までとは打って変わり、ジャズ音楽となり、文字も普通に横並びとなっていて、これはちょっと寂しかったです(笑)。
お約束の“家”絡みのストーリーが展開されていきます。昭和という時代故か、男性の権力が強すぎますね。男の強欲に振り回された女性たちがまぁ気の毒です。これはシリーズを通して言えることだと思います。今作はそんな中でも悲劇性が一段と強い気がしました。
佐久間良子と桜田淳子がいい味を出していましたね。2人の見事な演技によって、悲劇性がより感じられるものになっていたと思います。桜田淳子のパッツンがめちゃくちゃ可愛い(笑)。今作では金田一の助手的なキャラクターがいて、草刈正雄が演じています。ちょっとおとぼけた感じがおもしろかったですね。他のキャスト陣は過去作に出演されている方が多く、シリーズオールスターとなっています。そんな中でも、草笛光子、大滝秀治、三木のり平、小林昭二、そして加藤武は主演の石坂浩二と共にシリーズ5作 全てに出演されました。前作でヒロインを演じた中井貴惠がちょい役に格下げになってましたが、役名が佐田ってのはお父さん繋がりかな。
今作は、原作も「金田一耕助最後の事件」とされているらしいですね。シリーズ最終作ということで、事件の最後はいつもに増して切な〜い感じになってました。ラストシーンでは横溝正史本人が再び登場し、中井貴惠、草刈正雄とのほのぼのした様子で幕を閉じます。
ストーリー的には同じような色なので、毎回新鮮味や衝撃がある訳ではなかったですが、全体的に漂う不気味感、複雑な人物関係、ところどころに散見されるコミカルな要素 などなど、ここにしかない魅力が詰まったシリーズだったと思います。終わっちゃうのはちょっと寂しさもありますね。いっそのこと、金田一耕助シリーズの原作 全てを市川崑×石坂浩二コンビでつくってほしかった。そりゃさすがに無理か(笑)。
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