綾

オアシスの綾のネタバレレビュー・内容・結末

オアシス(2002年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

高校生だった私に「やっと気づいたか、おまえにも差別する心はあるんやぞ」と諭してくれた映画であり、大学の卒論でも取り上げた思い入れ深い作品。後にも先にもない衝撃の出合いだった。

白状するなら、私は何度もジョンドゥに嫌悪を覚え、コンジュから目を背けそうになった。ずっと居心地が悪かった。コンジュの美しく穏やかな空想が、いつまでも続けばいいのにと願ってしまった。そして、気がついた。私はふたりに「冷酷な社会」に憤りながら、その実、私も同じ立場からふたりを見下ろしているのかもしれないって。積極的に迫害せずとも、受け入れることもできていなかった。「コンジュに欲情するのか?」と嘲笑った警官、露骨に煙たがる家族、彼らを断罪することなどできなくて。傷つけてやりたいという悪意こそ無けれど、その根本に蠢くモノを、私もたしかに持ち合わせている。持ち合わせていない人なんて、きっといない。私と「冷たい世間」、何がどう違うというのだろう。

ラストシーンに呆然とした。私に泣く資格なんてないと思いながら、胸が熱くなって。オアシスの意味を、理解した気がした。コンジュの部屋を満たすあたたかな光は、希望だったな。

本作を観て、自分の中に潜む差別する心を見つめようと思えるようになった。ジョンドゥやコンジュに寄り添い、ふたりのために憤る気持ちも大切だけれど、それと同じくらい、自分を省みることも大切で。じゃあ私はどうなんだ?現実の私はどうなんだ?って。問い続けること。
あまりにも厳しい映画だと思う。そしてその分、誠実だった。
綾