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リトル・ランボーズのしゃにむのレビュー・感想・評価

リトル・ランボーズ(2007年製作の映画)
4.9
はじめて観た映画は?
歳を重ねるごとに小さい頃の記憶はぼんやりして行きます。昨日の晩ご飯もやっとの思いで思い出してひやりひやり。危ない。だけどこの問いに直面すると即答出来る自信があります(まぁ何かとは言いませんが)。少年期の劇場体験は今と比べものにならないくらい刺激的なものだったと思います。凄く単純で繊細で。下手をしたら映画を真に受けたりして。自分はホラー映画を観た時にあまりに恐ろしくて怪物が画面からこっちに来れないようにテレビをガムテープでぐるぐる巻きにしたことがあります(その後に母親に布団にぐるぐる巻きにされたことは言うまでも無いです)。今となっては実直過ぎて笑えてくる記憶ばかりですが、反面それだけ純粋に映画を楽しめた時期が羨ましく思えます。映画の主題やら俳優の演技やら小難しいことを考えずに映画に真っ向からぶつかって行く思い切りの良さは二度と戻らないような気がします。
特に初めて映画を観た体験が少年に与える衝撃は計り知れ無いでしょう。空想と絵を描くことが好きな病弱な少年ウィルは敬虔な宗教一家に生まれて以来一度もテレビを見ずに育てられました。ひょんなことからやんちゃな不良少年リー・カーターに出会います。ちょうどリーはテレビの少年映画募集の企画に応募しようと思っていてウィルを半ば強引に撮影に引き入れます。この時カーター家で録画した「ランボー」がやっていてウィル少年はそれを目にします。すると見終わった途端ひ弱な少年はジャングルを駆け抜けるランボーの真似をし始めます。大人しかったウィル少年は何処に?初めての映画の影響ですか。うーん、スタローンも罪な男ですね。笑 ランボーになりきったウィル少年は映画の製作にやる気満々。落書きまみれの聖書に「ランボーの息子」の脚本を描き対照的な二人の少年の初めての映画製作が始まります。
ウィル少年がとにかく可愛らしいです。最初のパラパラ漫画もそうだけどイラストに味わいがある。トイレに空想を描くシーンとか好きです。内向的で繊細さを思わせる描写があり大人びているか、と判断すると、意外に行動力がある。制服のネクタイを頭に巻きつけシャツだけになると立派なランボー!単純なところは子どもだ 。微笑ましい。家のことに悩む姿もまたいじらしい。リー少年はウィル少年が静なら動です。映画館でタバコを吹かし大胆に盗撮しちゃう不良少年。だけど荒れるのには家庭の事情があるみたいで…唯一の肉親である兄貴には冷たくされ愛情に飢えています。ぶっきらぼうな不良少年タイプに見えて実は内面が繊細…スタンドバイミーのクリスに似たキャラクターです。撮影シーンは微笑ましい。途中でクルーが増えて衝突することもあります。心の叫び。見ていて苦しくなります。最後のシーンは素晴らしい。ニューシネマパラダイスを観た時の感動を思い出しました。リトル・ランボーズは間違いなく名作です。観なきゃランボーになるぞ。
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