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男性の好きなスポーツのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

男性の好きなスポーツ(1964年製作の映画)
3.7
《男性の好きなスポーツといってもポルノ映画ではございません》

ハワードホークス監督は『赤ちゃん教育』という有名なスクリューボールコメディを残していますが、スクリューボールコメディの有り余った手腕を再度発揮したのが、コレだ。登場人物がエキセントリックな行動や会話を展開させる事から笑いを生むコメディでありますが、ボーイミーツガールの枠組みにはめてみると、日本のキラキラ恋愛映画も羨ましがるようなドタバタ胸キュンの応酬で、私のハートはぶち抜かれました。

男性という生き物はいつの世も女性を制したいもの、、なんて常識は50年前の固定観念やもしれないが、それでも男性の好きなスポーツは女性でござい!とご機嫌なテーマソングに合わせて、サーフィン、テニスなどのスポーツを楽しむ女性がエッチな姿の静止画に切り取られる。ショーンコネリー時代のボンド映画を思わすオープニングにワクワクしてくる。

始めに、駐車スペースを横取りされた女に向かい男は怒りを表す。「ごめんあそばせ」と女は行ってしまい、男はなんとか車をどかそうと四苦八苦してる内に警備員がやってきて「失礼、これはあなたの車ですか?免許証拝見しても?」とThat'sスクリューボールコメディなやり取りで違反料金払う、払わないコントを魅せる。

少し戸惑う笑いのスタイルに感じられるかもしれないが、隙あらば笑いを詰め込むこの映画に10分くらいでアバンギャルドなユーモアにも慣れてきて、一度受け入れたら存分に笑う事ができます。

また、現場に顔を出さないがやり手のセールスマンが、いざ現場視察に繰り出してみるとわからない事だらけで手も足も出なかった、外回り営業マンの教訓話に置き換えられるメチャクチャ興味深い内容だったのだ。

釣具店でトップセールス成績を誇る男は、その接客術からかき集めた知識で釣りの必勝法本を出し、釣り師の間で一目置かれる存在となっていた。ところが、男は一度も釣りをやったことがなく、ひょんなことから女性2人と共に釣り大会で優勝しなければならない羽目になる。

そして胸キュンドキドキ展開が羅列される中にも、タイミング最悪な鉢合わせのユーモアなどから常に笑みが溢れる魅力がある。
かと思えば、『死霊のはらわた』みたいな一人コントをやったり、スクーター走行中に熊と衝突してしまい、気づいたら熊がスクーターをパクって乗り逃げされたりとアバンギャルドすぎて、笑うというより開いた口が塞がらない。キスシーンは3秒以内というヘイズコードの影響からか、キスを交わすと、列車の衝突インサートが挿入される、あからさまなユーモアを見せつけたりもします。

そして、絵に描いたようなツンデレ状態の2人が嵐の森で、雨宿りを口実に簡易テントで相合いベッドするという絶句しそうなほどロマンティックなシチュエーションが用意されているのだ。やがて寝ていると、2人きりのベッドは湖にプカプカ流され、007のラストみたくケレン味抜群な2人きりのベッドで抱き合う。
そう、これは大物の魚の代わりに美女を釣り上げるという釣りバカ日誌な映画だったのだ。

そして最後はゴダール映画みたいに「これで映画は終わりね、THE ENDなのよ」とメタ発言をかまし、THE ENDする。
もう大満足な見応えでした。
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