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デューン 砂の惑星PART2のLudovicoMedのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
3.6
《音のアトラクション!振動で浴びるDUNEの世界》

アレハンドロホドロフスキーが根を上げデヴィッドリンチが大スベリした、いわゆる映像化不可能案件を果敢に挑んだドゥニヴィルヌーヴだが、そもそも無謀な企画だった言い訳を差し引いても信じられない退屈さだったPART1。てかPART1なんて聞いてなかったしアカデミー賞取りまくるしで仲間内でDUNE裁判の憂さ晴らしをワイワイやった因縁の思い出作品となっている。そんな訳で義務感だけしか残ってないPART2だったが、よくよく考えるとこっから先は盛り上がりようしかない戦争パートなはずだし、シナリオもこれ以上鈍重になりようがないことが伝わる予告編解禁でやっと観たくなれた。にしても概ね知ってる話を観にいくこの謎のバイアスはなんなんやろう、PART1未見でも最悪リンチ版を観たことあれば行けんじゃねとすら思った。

そんな興醒めの私でも今回のはIMAXのスケールが凄すぎてアゲアゲだった。本作の正体はIMAX必見を最大のウリとした視覚音響体験フル稼働映画だったのだ。これは次回のアカデミー賞技術部門総ナメするための映画といえるくらい、IMAX画角フルサイズがほぼ?全編に渡って視界を牛耳りまるで映画の中から鑑賞してる気がした感動があった。映画館の設備自慢にももってこいの最新進化系って意味では冗談抜きに『アバター2』以来ってほどです。
手始めに縦の構図を見せつける崖を使った空中浮遊/落下のアクションで、はい心鷲掴み。そして待つのは砂漠という広い空間を極限まで広く撮る砂漠映画としてもエポックメーキングな無数の傾斜角に影の角度をつけた造形美でのっぺり映像を回避。超俯瞰の空撮を前進しながらグイーンと人物に接近するマクロ→ミクロの移動は思わず、どうやって撮影した?と驚かされた。なにより最大の感動は強烈すぎる眩しさにあった。映画観て眩しすぎて目を細める生まれて初めての反応した異常事態に何が起こってんのかわかんなかった。

しかし、もっとヤバいのは音響の方で最も白眉を担うのがサンドワームサーフィン儀式のくだりだ。大きな音により振動が伝わる現象がありますが、リンチ版ではあまりにちゃっちかったその見せ場をヴィルヌーヴは恐らくそういう音響現象を狙ったアプローチをしている。砂塵がドンドン近づいてくる没入を迫り来る振動で表現され、砂丘がパックリ割れるあり得ないスペクタクルが目の前に広がる。そこへポールがダイブすると『マッドマックス怒りのデスロード』名砂嵐場面ばりの視界となり、揺れも極に達し4DX的振動の世界に居る。そして飛び乗った時の鳥肌まで忘れ難い映画体験を味わえた。

そんなこんなの盛り上がり性は格段に増えた今作は、DUNEという看板に気を取られすぎなければ概ねブロックバスターとして成功でしょうが、大事な赤点要素としてスペースオペラに全く見えない問題がある。前半はまだフレメンのモンド的死生観として巨大な宮殿のような貯蓄水の墓場概念等。ならではの世界観を堪能できたが段々惑星規模から国同士のいざこざみたく見えてくるスケールの収縮が残念であり、アラキス統治を巡る軸と救世主の決断に揺れるポールとチャニの恋沙汰も淡白な主軸で残りの分量はサッパリ断捨離じみていた。物語構成をきっちり分配されたハゲコンネン一派エピソードも、これみよがし感強く打ち出すフェイドとモノクロビジョンはロバートエガースに見劣りする時間だったし(しかも無駄に長い)そんな暇あったらモノリス型薬剤メランジ中毒となってる銀河の掘り下げとか観念世界も色々見せてよ。結局はデザインの振り分け不足に行きつくのだがウォーケン&ピューコンビの質素なエピソードを唐突にねじ込んでお茶を濁らすとか、砂漠描写以外に興味なさすぎだろ。確かにリンチ版最大の不評ポイントは結局何を巡る話かわからないだっただけに、ということかもしれないけどそこは長時間かけてんだからさー。

では、今回重視されたポールとチャニの葛藤はというと、端的に物凄ーく現代っぽい大河ドラマみたいだった。裏工作された救世主へのシナリオつまりクイザッツハデラックの件がやたら簡略化されすぎてお見合い結婚に納得いかない本命彼女が嫉妬する話だし、命の水を飲んで涙のキッスでポールが蘇って以降はチャニのムシャクシャした表情ドアップしか覚えてない。

今回もヴィルヌーヴのケレン味がない悪い癖が働いた事で戦争シーンも淡白だった。サンドワームという戦車を手に入れた事でアッサリ一網打尽で全く脅威が感じず仕舞いで。なんかダメ出しばっかりになったがこんな滅多にない映画館体験させてもらっただけで超興奮のアシッドだったし内容面の短所を踏まえても全然肯定派です。

てかそれよりもアニャの布石だった。未だ映画化されていない"砂漠の救世主"こと観念世界でバトル編がついに観られるかもしれないのが大いに楽しみなんで頓挫しないよう願う。
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