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悪魔のシスター デジタルリマスター版のLudovicoMedのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

《被害者〜目撃者、当事者目線の共有が限界に達した時、、、》

ブライアンデパルマのメジャー進出となった『悪魔のシスター』がリバイバルで公開された。昔観た時は技巧的なわざとらしさが好きじゃなかったが私にとっては、クリストファーリーヴ版スーパーマンのロイスレーンでお馴染みマーゴキダー映画として偏愛してたのもあって久々の再鑑賞にいってきた。かつてはヒッチコックパクリ監督として認知され、下品と総括されていた世評がひっくり返るまで随分時間がかかったデパルマであるが、改めて観るとトチ狂った物語って感じだし、今になってああいう批評のされ方も理解できる気がする。『愛のメモリー』なんてトンデモ気持ち悪い話だし、ほとんどの作品が二重人格どんでん返しものやもんな。それと『マリグナント』がほぼ本作と一緒だったのがオープニングでネタを明かしてるところで、そういやと繋がった一方、コケ脅し的技巧の数々も不器用ながら実は効果的でもあって全然超面白い映画だったわ。

やはり重要なのはデパルマのトレードマークである覗き込む目線に伴う行動原理であるが、本作の場合自分が見た出来事を証明するのが如何に難しいか、にサスペンスが置かれている。それが被害者と目撃者の視点転移により事実とされてるも、黒人の死体の行方は誰一人知る由もなかったという皮肉なオチが流石のセンス。

前半のひょんな事からマーゴキダーと一夜を過ごせそうになる黒人が「よっしゃ、今夜はいけるぞー」的な2回頷くとこが好き。マーゴキダーはどうやら情緒不安定でおはようのキッスもないまま薬がなくなるとわかると二度寝する。こういうヤバいメンヘラ描写が妙にリアルだったし余計隙だらけのエロさが増す。そしてスプリットスクリーンでは目撃するも中々辿り着けないもどかしさを打ち出し、死体を隠すもう一方のヒヤヒヤがまあ傑作でエレベーターのすれ違いとかふとカメラをパンさせたら血痕が、とサスペンスを組み立てる。ここで鏡を見るマーゴキダーの顔が鏡で分割されてる精神分離へのサジェスチョンが見事だ。また見守るしかないヒヤヒヤは双眼鏡越しで見る探偵が不法侵入中帰宅してくるピンチでも応用されている。

しかし本作の本領発揮は奇々怪々と化す後半のプロットでしょう。結合双生児までは捻りとしてあれどもやっぱりあの白い建物からが怖すぎる。特に施設の従業員もあの流れからすると確かに患者だと思い込んでしまうのも恐ろしいし、抵抗できず入れられた彼女は死んだ結合双生児の姉妹の感情を追体験しながら悪夢的に目撃してしまうという狂った覗き見構図になる。ヒッチコックでもここまでやらんやろという俗悪の極みが覗き見の定性を保ちつつ瞳の中にグイーッと入り込みアイリスイン。死んだ姉妹の方目線で開示された映像では被験者であるグレースの恐怖する意識も混じり異常さを掻き立てる。見世物の恐怖に晒され儀式チックの狂った手術が行われるその瞬間、ホラー史に残る悲鳴が。めっちゃトラウマ映画ではないか。映画館でちゃんと観れたのもあってか一個一個の見せ場が怒涛の連続で襲ってくる怖さがあった。 

所々不器用に思うところもあったが初期作にやりたいこと過剰にぶち込んで荒削りになるデパルマのクセが正解すぎる。
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