emily

KOTOKOのemilyのレビュー・感想・評価

KOTOKO(2011年製作の映画)
3.7
 人の顔が二つに見えてしまう、まだ幼い息子大二郎を育てるコトコ。歌ってる時だけ世界は一つになり心を保つ事が出来た。強迫概念にかられ、大二郎に近づく者は殴り、引っ越しを繰り返していた。幼児虐待を疑われ、息子とは離れ離れにされ苦しむ日々の中で、コトコの歌声に魅せられた小説家の田中と出会う。

 人の顔が二つに見え、現実と幻覚が分からなくなってしまうコトコ。常に揺れるカメラとアップを多様した臨場感と、ヒリツキの中、細い腕のコトコ演じるCoccoの歌声が透明に響く。Coccoのための映画と言っても過言ではないほど怖いほどにコトコと一体化しており、Cocco自身の心身と交差している。圧倒的な演技力、血の赤とその痛みが生を確認させ、歌が心を浄化い、観客の心にも染み入るように彼女の歌声が響く。

 ちゃんと生きなくてはと頑張れば頑張るほど空回りしてしまう。もっと楽になればいい。誰かに頼ればいい。しかしそんな回答を残してはくれない。生きにくくしているのは自分自身だと分かっているから苦しいのだ。不器用すぎるが自分と向き合い真摯に息子と向き合ってる。そして息子の存在が彼女の細い生を繋いでいるのは言うまでもない。手を差し伸べた田中もいた。しかしつかの間の優しさは何の意味もなさないのだ。それならいっそ関わらない方が良い。生きる事を生きる。ただそれを必死でやってるだけ・・
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