ルサチマ

ついのすみかのルサチマのレビュー・感想・評価

ついのすみか(1986年製作の映画)
4.2
2回目 9月17日@ポレポレ座

1回目 7月30日@アテネフランセ

冒頭から異様なクロースアップによって恋人を失った男と、その恋人の妹が室内でやりとりする様を切り取っていくが、井川の映画並びに彼のリハーサル中の映像資料を見ているなかで、人物間の距離とそこでの圧迫感は恐らく井川演出の一つの基準にあるように思われる。しかし、井川のシナ研時代の作品を追悼上映された『せなせなな』とともに確認していて驚かされるのは、学生時代の作品から亡くなるまで、その演出の仕方の基準や題材の選び方まで、どこかで繋がっている印象を強く感じることだ。
ともかく、今作は明らかにその後来るべき『寝耳に水』や『西みがき』の原点と言えるべき、知人の失踪と残されたものたちが「平気で生き続ける」ことを提示した作品であるだろうし、人物の身体の一部を切り取る印象的なクロースアップが官能性を帯びていること(計算された上で、被写体を不意打ちで撮影したかのように見える)は注目に値する。
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