akihiko810

アイズ ワイド シャットのakihiko810のレビュー・感想・評価

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
3.8
「でも私たちは大事なことを今、しなくちゃダメ」「ファックよ」
gyaoで10年ぶりほどに再視聴。
スタンリー・キューブリック監督の遺作。ニコール・キッドマンとトム・クルーズ夫妻が主演。

倦怠期を迎える夫婦が経験する、お互いの嫉妬による不審感。嫁の浮気を疑う主人公はその気持ちからだんだんと、エロティックで夢のような世界に足を踏み入れることになる…。
秘密の乱交パーティーをめぐるサスペンス。

結婚生活に倦怠感を抱えるトム・クルーズが、まるで夢のような秘密のパーティーに潜入するも正体がバレる。翌日あのパーティーは実在するのかと調べようとするも、身の危険を感じ始め…。トム・クルーズは今までのような日常へ、妻の元へと戻る。

ストーリーとしては、退屈な日常から異世界に迷い込み、異世界を垣間見たのち日常に帰還する「異世界訪問もの」-たとえば千と千尋ーである。この映画の素晴らしいところは、妻とはいえ「他者は根本的にわからない」そして「世界の全体は理解できない」ことを徹底して描いたこと、そしてそれでも「愛は成立すること」を描いたことだろうか。
社会学者の宮台真司が90年代後半に語っていた「成熟社会の生きる知恵」を思い出す。「日常は砂を噛むように味気ない。それでも”あえて”振る舞う」ことが成熟した社会を豊かに生きる知恵なのだ…と。
そういえば、この作品も99年と世紀末の作品である。当時の宮台とかぶるのも、時代的な流れだったのだろうか。
夫婦が他者でありながら共に生きること、描いた佳作。
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