akihiko810

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のakihiko810のレビュー・感想・評価

4.7
「俺の人生はつまらなくなんかない!家族がいる幸せを、あんたたちにもわけてあげたいくらいだぜ!」

youtubeで東京タワーをしんのすけが走りきる場面だけみた。
Filmarks登録以前に観た映画を振り返るシリーズ1作目。

春日部に誕生した「20世紀博」。そこはひろしやみさえたちが育った70年代のテレビ番組や映画、そして暮らしなどを再現した懐かしい世界にひたれるテーマ・パークだった。大人たちは子どもそっちのけで夢の世界に熱中する。やがて、街から大人たちが消えてしまう…。

「オトナ帝国」、01年の作品… もう20年以上昔の作品なのか。たぶんこの作品は地上波初登場でみたはず。
初見のときは、やっぱり「え…?これ…すごくない?」と思ったし、ひろしが記憶を取り戻す回想のシーンや、しんのすけが階段をかけ上るシーンは思い出すだけでいまだに泣けるからねぇ。

多分私はひろしの年齢と並ぶくらいになって、でも独り者で気ままに生きてはいるのだが、やはり「昔、自分が見た世界は(そして自分は)たしかに輝いていた」というノスタルジーを突き付けられたら、その失ってしまった輝きに胸が痛む。
子どもの時は、「未来の自分」はたしかにあんなに輝いていたのに…。
今、オタキング岡田の「オトナ帝国」解説動画を見てるが、ひろしの「現実に帰らなければならない」という「葛藤」をみると、私も胸がぐっとくる。

「人生というのは、何かを得ることだと若い人は勘違いしているけど、本当は失っていく過程なんだよ」とは、宮崎駿も押井守も村上春樹も、禅僧の南直哉も言っていることだ。そして私もそう思う。
しかし、失ったものだけではなく、得たものもたしかにある。ひろしにとっては、それが家族だった。
失ったもの(未来への輝き)を憧憬しながら、同時に大人になって得たものの素晴らしさを再確認させてくれる、素晴らしい作品だ。

もう私は、クレしんもドラえもんもコナンも見ないので、子供作品に触れることはほとんどないのだが、こういう「大傑作」は子供向けでも見ていきたい。というか、大人も子供も満足する傑作を、子供向けコンテンツクリエイターの方はばしばし作ってほしい。
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