よしまる

麗しのサブリナのよしまるのレビュー・感想・評価

麗しのサブリナ(1954年製作の映画)
3.7

 映画「オードリーヘプバーン」公開記念レビューその3。

 「シャレード」公開より遡ること9年、ケーリーグラントは「麗しのサブリナ」の出演を撮影直前に断り、急遽ハンフリーボガードに交代。

 脚本は手直しされたものの、なんとなく違和感を感じてしまうのはそのせいか?
 ハードボイルドが似合うダンディの代名詞のような男が若い娘に振り回されるのは、たとえミスマッチを狙った演出とはいえちょっと笑えない部分でもあった。ましてボギー本人も出演を良しとしていなかったそうで、監督やホールデンとも反目し合っていたという。(そうは感じさせない名演ぶりはさすが!)

 だがしかし。そんな些細なことは「可愛いお爺ちゃんやなぁ!」ってことで薄目を開けてスルーしよう。
 好奇心旺盛な少女がパリでの花嫁修行を経て見違えたように垢抜け、ジバンシイのドレスに身を包んだ姿はとてもモノクロとは思えない煌びやかな世界。前年の「ローマの休日」に続いてのイーディスヘッドのアカデミー衣装デザイン賞受賞となるも、実際にオードリーのドレスをデザインしたのはジバンシイで、さすがのイーディスも作っただけ、みたいに言われている。
 いずれにせよ、オードリーとジバンシイの不動のコラボレーションはこの作品から始まったのだ。

 さて、ハンフリーボガード55歳とウィリアムホールデン35歳の兄弟がオードリーヘプバーン24歳を取り合うという年齢だけ見ると無茶苦茶な設定ながら、さすがのビリーワイルダー監督。
 破綻のないプロットと随所に光るコメディセンスで、観ている間ずっと楽しい。そして運転手のお父さん。オードリーの父親役というのは人格者でセンスに長けた人が多く、本作でも抜群の立ち位置で安心させてくれる。

 マイナス点をあえて言うとすれば、オジサンに迫られてイチイチうっとりと恍惚の表情を浮かべるオードリーになぜか可哀想という感情が湧き出てしまうことか笑

 しかし考えてみたらオードリーはモノクロ時代の銀幕のスター達の中にあって、整った美貌と高身長と隙の無い演技力で、まるで1人だけ違う世界線に生きているかのよう。

 もっともボクは、神がかった魅力で画面の中でも外でもオジサンたちを翻弄したこの頃よりも、後に普通にドラマを演ってる彼女のほうが好きなのだけれど、それはやはり自分もオジサンになってしまい、もはや観ていて小っ恥ずかしいからなのだろうか笑