よしまる

べイビーわるきゅーれのよしまるのレビュー・感想・評価

べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)
4.1
2023年公開の邦画レビューを続けてきましてあと一本、その前に前作をまだマークしていなかったので先に書く。

邦画でエッジの効いたアクション映画というと70年代まで遡るか、もしくは北野武や白石和彌、坂本信介などひと握りの才能に頼るしかない訳で、これにコメディ要素となると俄然ハードルが上がる。

フランスや韓国はあんなに上手いのに、日本じゃどうしてお寒〜いことになってしまうのか常々不思議だったけれど、いやいや、ちゃんとあるじゃん!

殺人を生業とし、命を軽く扱う点で受け付けない方はご遠慮いただくとして。

小さい女の子が殺人を行うアニメや映画はさすがに受け入れがたくなってきたけれど、下手にシリアス気取ることなくコメディに徹しているから面白い。ムカつく奴なんて殺しちまえばいいじゃん、絵空事なんだから!と楽しめる人にはサイコーだ。

舞台は現代、Z世代ど真ん中の2人の女子高生が主人公、職業殺し屋。
既に終身雇用や年功序列の価値観は崩壊し、社会への期待感も薄い世代。かと言って中途半端に一括りに出来ないのもZ世代の特長であり、一流メーカーへの就職よりも公務員志向が多かったり、一方でITや投資でガンガン稼ぐ者もいたりする。
そうした多様性のひとつのケースとしての殺し屋。

そんな見立てで若者像を覗き見できるのが楽しい。バイト先の先輩がジョジョの名言をいちいち言ってくるのがうざいとか、隣でカップ麺を啜る音がうるさくてスリッパで殴るとか、些細な描写の積み重ねがキャラクターを形成する。

悪役サイドのキャラクターも簡単に殺されちゃったりするんだけど、何処か垢抜けてなくて憎めない。それだけに倫理的にオイオイってなるのが逆にいい。あえて言葉で例えるなら「痛快」ということになるだろうか。

阪元裕吾監督は当時25歳。予算が無いばかりにハリウッドの劣化版だったり、センスが無いばかりに欧州ノワールの素人臭全開版のような邦画が当たり前のように量産されてしまう現在の邦画界。

なぜせっかく世界から注目されるアニメやカワイイやアイドルなどのサブカルという財産を持ちながら自国の文化にナチュラルに寄り添えないのだろうか。

日本にしか産み得ない極上のキッチュな映画の最適解がここにある。