本作の劇場公開時、TVCMが多く流れていたり、フリトレーのお菓子とのタイアップをやっていたりと強く印象に残ってはいたものの、今まで一度も見たことがなかった。しかし先日、ベン・アフレック『AIR』、そしてNetflix『マイケル・ジョーダン ラストダンス』を見た流れでやっと見ることになった。
一応ストリーミングサービスでも配信はされているが、日本語吹替は上がっていなかったのでDVDを購入し鑑賞した(ちなみに2023年の時点で日本版ブルーレイはリリースされていない)。
子供向けの作品であることと、filmarksのレビューであまり良い評価がなかったことからそこまで期待していなかったが、実際に見てみるとジョーダン映画としてかなりよくできており、個人的にはかなりの良作だと感じた。たぶん上記2作品、中でも『ラストダンス』でジョーダンのバックグラウンドや映画制作時の彼を取り巻く状況について把握できていたのが大きかった。
映画の内容は悪の宇宙人チームがバッグス・バニー率いる『ルーニー・テューンズ』と助っ人のマイケル・ジョーダンのチームとバスケ対決をするというもので、ストーリーはあって無いようなものなのだが、現実のジョーダンの人生が物語に上手く取り入れられており、非常に面白い。
物語の中で、悪の宇宙人チームがNBAの名選手から能力を奪って自分達のものにしてしまうが、その時たまたまジョーダンはバスケを引退して野球選手になっていたから能力を奪われることなく、バッグスたちの仲間になれたという設定。これは完全に映画制作直前の彼の状況を反映している。
また、子供時代のジョーダンが父親にNBA選手、そして野球選手になる夢を語っているシーンを冒頭に入れているが、これはジョーダンの父が93年に亡くなっていることを踏まえた感動的な演出と言えるだろう。
その他にもジョーダンがルーニーテューンズ世界に入り込むきっかけが、彼の趣味として有名なゴルフだったり、クライマックスではジョーダンのギャンブル癖も披露される。
ラストシーンでジョーダンはNBAに復帰するが、これは完全に現実とリンクしており、彼の決断の裏にバッグス達の存在があったように思えてとても面白い。
映像的にも、実写の中でアニメキャラが活躍するシーンと、アニメ世界の中で実写の人間が活躍するシーンの2種類の試みがなされており、どちらも一定程度成功しているように思う。個人的に、ド派手なアニメ世界の中でジョーダンのプレイがあまり目立っていなかったことが気になったが、最後のゴールシーンで非常にアニメ的な演出があったので大満足だった。
あと、ジョーダンの演技については、吹替が山寺宏一であるが故に素人感が全く感じられず、特に気にせず見ることができた。
ジョーダンの人となりを知った上で見るとかなり楽しめる作品だったと思う。傑作。