このレビューはネタバレを含みます
「生きているということ。いま生きているということ。それはのどがかわくということ。木漏れ日がまぶしいということ。ふっと或るメロディを思い出すということ。くしゃみをすること。あなたと手をつなぐこと。」
『そして父になる』の是枝裕和監督作品。
『そして~』では大人目線から「大人の事情」に振り回される子供たちを軸にストーリーが展開するけど、本作は完全に「子供目線」で、大人の「優しさ」「勝手さ」「弱さ」「温かさ」「怖さ」「愛の無さ」「愛の深さ」「判ってくれなさ」「頼もしさ」などが映し出され、ハッとさせられる。
両親の離婚により鹿児島県と福岡県で離ればなれに暮らす小学校6年生の兄と4年生の弟。
いつかまた家族4人で暮らしたいと願う兄弟は、九州新幹線が全線開業する日の朝、鹿児島から福岡に向かう新幹線「つばめ」と福岡から鹿児島に向かう「さくら」が初めてすれ違ったときに「願い事」が叶うという噂を耳にする。
そして、2人は「願い事」を叶える為の計画を立て始める・・・。
大人は絶対に判らないが、子供の「心」は日々いろいろな「願い」や「想い」で溢れている。
そんな子供の「心の声」に耳を傾けてくれる大人は意外と少なく、子供はいつも少しずつ寂しい想いを募らせているのだろう。
何気ない子供の「つぶやき」の裏には、実は子供にとっては大きな大きな「想い」があったりする。
大人から見ると些細な事でも子供にとっては「大事件」かもしれない。
これらは、大人は忘れてしまいがちな事だけど本当はとても大切なことなのだ。
子供は、いろいろな「奇跡」を願っている。
いろいろな「奇跡」を信じている。
そんな数々の想いを持った子供たちが大冒険に出て、いろいろな経験や困難を超えて、ひた向きに奇跡を願う。
クライマックスで振り返れば、気づかないうちにすでに数々の「奇跡」の巡り合わせが起こった上でラストシーンにたどり着いている。
これは「人生」にも当てはまる。
誰もが気付かないうちに「小さな奇跡」や「大きな奇跡」の積み重ねの中で今の自分にたどり着いている。
そして、「親」からすれば「子供」が誕生したこと自体が一番大きな「奇跡」だろう。
全世界の子供たちの人生は、「奇跡」からスタートしているのだ。
「あなたもきっと、誰かの奇跡。」