マーチ

倫敦(ロンドン)から来た男のマーチのレビュー・感想・評価

3.8
長回し愛好家としてはたまらないものがある作品。

ストーリーは薄いようで薄くないというか、多分リアルにこういった話を描くと実時間はこんな感じになるんだろう。タル・ベーラばっかり観てると、他の映画がいかに意図的にドラマ性を盛り込んでいるのがより浮き彫りになってくる。

モノクロで極力セリフも排されていることからワンシーンにジッと見入ってしまうし、カメラと役者の動きを見つめているだけでその様が脳内で活字化されていく。まるで小説を読んでいる時のような、贅沢で文学的な時間。

生活音がサウンドトラックのように聞こえてくるのも印象的だし、劇伴自体も登場人物の内面に寄り添うようなエモーショナルさがあって効果的。

画面を見つめているだけでいつの間にか悦に入っている瞬間があるし、幻想的で美しいカットも多い。タルはカットとカットを繋ぐことをカメラワークだけで表現してみせているように思える。映画の可能性を追求し続けている作家(監督)の1人。
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