とらキチ

薔薇のスタビスキーのとらキチのレビュー・感想・評価

薔薇のスタビスキー(1973年製作の映画)
3.5
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3 ①
二つの世界大戦の間、1933年にフランスで発生した疑獄事件“スタヴィスキー事件”をモチーフに、その中心人物セルジュ・アレクサンドル・スタヴィスキーの最期の数年を描く。
ウクライナ出身のユダヤ人実業家アレクサンドル・スタヴィスキーは、金融から貴金属、武器の売買と手広くビジネスを展開していたが、それは彼自身の軽快な話術と政治家や有力者への賄賂によって獲得した利権を利用した詐欺同然の虚業だった。そして彼の銀行が多額の不法市公債を発行して破産したことから,政財界の腐敗が露見する。
前半はスタヴィスキーの、パリのホテルを拠点にした華やかな暮らしぶりを描く。ラペルのメチャクチャ広いスーツを華麗に着こなすジャン=ポール・ベルモンドがとても素敵。ラペルのフラワーホールに本当の生花💐を挿していて、たまにその生花をフレッシュなモノと「スッ」と取り替えたりするサマがメチャクチャカッコ良い!正直、この前半パートは少々退屈だったけど、セリフの端々に資金繰りのため“アブナイ橋”を渡ろうとする様子とかが語られる。また、資金難でムダな支出を抑えるように忠告されても「ここで倹約してケチ臭くなると、余計に疑われる!」とか言って、バンバンチップを払っていく様子には、詐欺師は詐欺師で、いろいろ大変なんだなぁ…と思わされた。
その後詐欺が発覚し、スタヴィスキーの周りからは人が居なくなっていくのだが、ここら辺からストーリーも動き出してサスペンス要素が強くなる。一度はパリから田舎の山荘へ逃げるのだが、その状況に彼は怒り「パリへ戻り全てをぶち撒ける」と意気込む。しかし彼は敢えなく権力側のトカゲの尻尾切りにあってしまう。この作品当時のジャン=ポール・ベルモンドは40歳ぐらいで渋みが増してきた頃だが、山荘で警官隊に襲われた時の身のこなしは、さすがな軽快さであり、アクション俳優としての矜持を見せられた感じで、やっぱりこの人はスゲ〜カッコイイわ!って改めて思わされた。
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