ウシュアイア

第9地区のウシュアイアのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
4.0
[あらすじ]
ある日,南アフリカのヨハネスブルク上空に,宇宙より謎の巨大飛行物体がやってくる。

人類は飛行物体に突入するとそこには,弱り切った様子の異形の知的生命体・エイリアンが多数いたのであった。強力な武器をもちながらも,人類に脅威を与える様子のないものの故郷の星に変える様子のないエイリアンに,居住地区を設けて地球上で生活させることとなる。

それから,20数年後,エイリアンたちの人口は増加し,また彼らの居住地区の第9地区はスラム化する。そんな中,超国家機関MNUによりエイリアンたちを強制移住させ,事態の打開を図ろうとする。エイリアン強制移住の陣頭指揮をとることとなった。ヴィカスは移住のための強引な交渉をエイリアンたちとするなか,不思議な黒い液体を浴びてしまい,その液体を不思議に思ったMNUに持ち帰る。時を同じくして,ヴィカスの身体には異変が起こり,一部がエイリアンそっくりとなり,エイリアンの能力を手に入れてしまう。

元に戻ろうと願うヴィカスであったが,MNUはヴィカスを治療するどころかヴィカスの身体を利用しようとし,ヴィカスはMNUやスラムのギャングから追われる身となる。・・・

[感想]
まずこの作品はエイリアンが攻撃的でないとして描かれているところがちょっと革命的である。自分が見落としていただけかもしれないが,エイリアンが地球にやってきた理由は最終的には明かされない。

変身が始まっているヴィカスに対し,故郷の星に帰れれば元に戻せる,とも言っているし,ネタばれ防止のため伏せている部分を観れば,宇宙で遭難してしまって,地球にたどりついたようである。

異星人との遭遇って,侵略や取引だけではないと思うし,このように難民としてやってくる可能性に言及した点は,膝を打たずにはいられない。しかし,地球に来ている時点で彼らの文明の方が高度であるのは明らかだし,彼らの武器を使えば,人類に対抗できうるにも関わらず,数の問題はあるとはいえ,長きに亘って地球人に虐げられるようになってしまったのかは,イマイチ辻褄があっていないように思えた。少なくとも,もっとエイリアンサイドに有利な取引が可能ではなかったのかと思えるのだ。

そして,次の作品につながりそうな終わり方もなかなか興味深い。
次回作は,エイリアンとの全面戦争になるのか・・・

また,この映画の撮り方も面白い。
芝居をただ映しているいるのではなく,一部のシーンを除いて架空のドキュメンタリーとしてカメラを回しているのも面白い。

だから,どうしてこういう事態になったのか,どうしてこういう行動をとることになったのかとても分かりやすいのである。ただ,やるんだったら,謎が残っても,隅々まで架空のドキュメンタリー形式は貫いてほしかった。

とにかくあらゆる面で斬新な作品だった。難民や差別の問題を風刺云々というレビューが見受けられたが,あまりヒューマニズムが色濃い作品ではなかった。むしろエンターテイメント性の強い作品だった。

ただし,他のエイリアン映画同様にグロい映像が多く,暴力的なシーンが多いので,そういうのが平気な人じゃないとキツい。

(2010年5月10日)
ウシュアイア

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