ぴのした

日本のいちばん長い日のぴのしたのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
3.9
面白かった!政治家や官僚、軍人たちが8月14日から15日にかけてどう動いたかというのを詳細に描いた映画。

教科書には「ポツダム宣言を受託して天皇が玉音放送で終戦を知らせた」とだけ記されるが、考えてみれば、今まで強固に戦争を推し進めてきた人たちが終戦に舵を切る会議があったわけで、その歴史について深く考えたことはなかった。

宮城事件というものがあったのも初めて知った。確かに、あれだけ戦争一辺倒だった軍人たちがすんなり終戦を受け入れるというのは不自然で、こういう事件があって不思議じゃないよな。

天皇が直々にラジオで話すということも考えてみたらすごいことだ。

NHKがJOAKの旗を掲げてやってきたのも「当時はまだJOAKなのか!」という謎の高揚感があってなんか嬉しかった。

クーデターを企てる軍の青年将校たちは身勝手で市民のことなど何も考えてないように見え、逆に閣僚や天皇は国民のことを考えて終戦を願っているように見える。

だが、軍人たちはずっとそういう教育を受けてきたわけで(それを推し進めてきたのは政治家なわけで)、なおかつ特攻で仲間を失っている状況で、「政府の老人たちが今更命が惜しくなった」と思うのも分からないでもない。

鈴木総理や阿南陸相の「これからの日本を背負うのは若い世代。きっと立ち直れる」という言葉は力強く、映画全体のメッセージとして前向きに受けとった。彼らに比べると、自殺した軍人たちへのカメラの目線は冷ややかだが、愚かな奴らと一蹴するのではなく、戦争に翻弄された人々の虚しさや哀れさ、悲壮感が漂う。

カッコよくないシン・ゴジラ、愚か者たちの24というか、誰もヒーローに描かれないのに面白いというリアルさが良かった。

この時代の演者はみな歯がガタガタで、それもリアルですごく良かった。横浜のじじいとか。メインキャストでは阿南陸相を演じた三船敏郎の顔の迫力がとにかく凄まじい。本物の陸相より陸相然としているのでは。昭和天皇の描き方も配慮が尽くされた形で独特で面白かった。