レインウォッチャー

オーロラの彼方へのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

オーロラの彼方へ(2000年製作の映画)
4.5
「伏線回収」中毒患者のみなさま、受付はこちらです。

オーロラが空に輝く夜、30年の時を超えてアマチュア無線機が父子の声を繋げる。原題の『Frequency』=周波数はここに由来するようだ。
所謂タイムパラドクス、バタフライ効果の要素と、アメリカン・グッド・オールド・ファミリーの偶像がこれ以上ない幸福な結婚を果たした映画。

劇中では超ひも理論についてTVが報じたりしていて、確かに90's半ば〜は第二革命と言われる時期。科学・SFのロマンとか夢が高まったタイミングでもあったのだろう。
同時に、WTCがまだ健在だった最後のときでもある。主人公ジョンの父フランクは「30年経とうが、子供に教えるのは憲法とロックと野球」なんて嘯くけれど、きっと当時の彼らは本気でそう信じていたのだと思う。

とまあ、小賢しい周辺観察はこのへんにしておいて、こんなに老若男女全天候型で「オモシロイヨ!」と勧めやすい作品もなかなかないのではなかろうか(※1)。UNOならワイルドカード、調味料なら味の素。

前半は、未来から助言することで父を死因となった事故から救おうとする展開。
ここまででも映画一本ぶんのネタにできそうなところ、そこからさらに2ndステージ開幕、ナースを狙う連続殺人事件の顛末が絡んできて、最終的にはあれがこーなってこれがあーなってカチャカチャカチャ、ウワアアアアアア!!!!あらゆる体液が毛穴から爆散して跡形も残らないぜ。

思うに、出汁とアクションは重ねれば重なるほど旨味が増すものである。
今作では、過去と現在で起こる出来事をたびたびシンクロさせて見せる。単に類似の現象が起こる、だけではなくて、動きのベクトル(落ちる、とか回る、とか)を伴っているところが多次元的で巧み。二重三重、時にはロジカルに、時にはファンタジックに越境して畳みかける演出にドーパミン量産不可避だ。

これはそのまま父子の絆を補強するメカニズムとなり、観客を勢いでゴールまで持っていくエンジンになる。積み重なったエモーションが理屈を追い抜いて、とにかく奇跡を信じたくさせてくれる、このKANJIを求めて映画を観ているよ。オーロラの彼方へ、さあいくぞ。

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※1:とはいえ、あくまでフルスイングファンタジーのため、「こんなの他にも影響出てるんじゃねーの?」とか言っちゃいがちな「ご都合主義」警察のみなさまにはおすすめできない。出口はあちらでちゅ。
ていうか、我が家よければとりあえず良し、なマインドもまたある意味とってもアメリカ的ですよne.