HicK

阿修羅のごとくのHicKのレビュー・感想・評価

阿修羅のごとく(2003年製作の映画)
4.0
《最強メンツが送る修羅場エンタメ》

【阿修羅の修羅場】
女たちの生態を描きながら修羅場のオンパレード。4姉妹と親それぞれにストーリーを持たせ、なかばオムニバスのように同時進行していくので見ていて飽きない。それどころか多すぎる修羅場の連続にコメディ要素やエンターテイメント性さえ感じる。姉妹それぞれの悩みや苦悩をシリアスに描き過ぎずに、「少しのプライドから自身の汚点や悩みを隠す」という関係性の連鎖に面白みがあるストーリー展開。

【長女】
父の浮気に対し、自身も不倫中のため複雑な感情を抱く長女(大竹しのぶ)。見せ場は何と言っても、彼女vs桃井かおり。もうゴジラvsキングコング。桃井のドヤ顔芸、笑う。長女が主演という事になっているが、キャラ設定上、メインストーリーの父の浮気には積極的に絡んでこないので、次女や三女の方が目立っていた。

【次女】
黒木瞳演じる次女は、母と同じ境遇。浮気をされた側に立たされているので、行動が長女と逆なのが面白い。長女、次女で加害者被害者の立場の違いがよく現れていた。

【深津絵里】
三女を演じた深津絵里。この作品と「踊る大捜査線2」の二つの役で助演女優賞にダブルノミネートされる。そして今作の方で最優秀賞に。劇中の「ちょっと突っついたら泣いちゃうような、やっと生きてる人間揺するなんて汚いわよ」と涙ながらに訴えるシーンが良かった。ただ、個人的にはこの作品よりも「踊る2」の役の方が本人っぽさが消えてるので見応えを感じる。

【八千草薫、長澤まさみ】
八千草様、やっぱり素敵です。敬語を使う役ばかり見てきたが、今回の自然体で話す母役を見てほっこりさせてもらった。あとは、翌年の「世界の中心で愛を叫ぶ」でブレイクを控える長澤まさみが次女の娘として2つぐらいのセリフのみで出演しているが、彼女も後に同じような姉妹系の「海街ダイアリー」で長女をウザったがる次女を演じる事になるのが感慨深い。

【好きなシーン】
本作で一番、演出・演技の凄みを感じたのは家族全員が揃う母の病室のシーン。浮気した父を責める次女。義父を守ろうとし自分の言い訳とも取れる弁護をする次女の夫。浮気をしている長女は途中から父にすがりつき泣いている。カオス。そこから父と母2人のシーンなのだが、そこまで全てワンカット。すごかった。いいもの見れた。

【その他】
・ほぼ音楽なしなのに、なぜかアカデミー音楽賞。
・ちょっと中村獅童の演技には疑問。でもアカデミー助演賞。
・四女の深田恭子は可哀想だった。こんな名優たちの中に入れられて、キャリアの浅さが露呈。もともと演技力で勝負っていうよりも、特定の役柄でハマり力を発揮するタイプだと思うので、今回は少し役損かな。

【総括】
四姉妹を襲う数々の修羅場に楽しませてもらった。深刻さを強調してないのでコメディのように楽しく見れる。なにより姉妹の関係性に最後はほっこりさせられる。こんなに立派な俳優たちが揃う映画も少ないので、いい物を見させてもらった。最強のメンバーで送る修羅場エンターテイメント。
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