世間一般で認知されている松田優作に最も離れていながらも、
役者 松田優作に最も近づける傑作。
わかり易く書くなら、良い意味でアクション(激しい運動という意味でのアクション)という無駄が省略されているので、
優作さん流のメソッドが大いに堪能できる。
素人目に見ても、彼の一挙一動からどれだけ台本を読み込んでいるのかが伝わってくる。
徹底的に作り込んだ長井代助は、原作者である漱石並びに脚本家の筒井ともみが創作した長井像を凌駕している。
外的にはこれといった激しい盛り上がりもない静かな静かな映画であるが、内的な抑揚が美しくそして凄まじい。
そして何より凄いのが、森田監督の演出、優作さんの芝居どちらもしっかりと際立って機能しているのだ。
80年代以降、監督主導で進行する映画という世界でこんな化学反応を見たことがない。
本作は森田監督と優作さんの信頼関係があってこそ完成した奇跡の一つと言えよう。
記念すべきこの日に、松田優作出演作品マイベスト1をup出来てただただ嬉しい限りである。