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インクレディブル・ハルクのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

インクレディブル・ハルク(2008年製作の映画)
2.5
軍部主導の放射線実験に自ら被験者となった科学者Bruce Bannnr(Edward Norton)は、実験の失敗によって心拍数が200を超えると《理性を失くした緑色の怪人》に変身してしまう身体となる。軍の追手から隠れ、元の身体へと戻る方法を探すBruceの元に、英海兵隊出身の精鋭が迫る。


◆ジキルとハイドとコング。

善良な科学者と粗暴な怪物が一つの身体に同居している姿は、英国の古典小説【ジキル博士とハイド氏】を彷彿とさせるものがありました。本能のままに暴れ回る怪物が美女と心を通わせる瞬間は、米国の古典映画【キングコング】と被りました。率直に『ジキルとハイドとキングコングみたいだなぁ』って思ったのですが、どうやら2003年のEric Bana × Ang Lee版のハルクを視聴した後にも同じことを思っていたみたいです。レビューに全く同じことが書いてありました。

これが《ハルク》なんですね。ジキルとハイドとキングコングを混ぜて緑色に着色したものが、ハルクというコンテンツなんですね。理性が蒸発して暴れ回る自分をなんとかしたいと奔走する博士の哀愁。愛する人のピンチを救うため、強大な力をヴィランにぶつけて打ち勝つ戦闘シーン。なぜか人里離れた辺境の地でドヤ顔かまして終幕。今作にはTony Starkが出てきていることを加味しても2003年版ハルクの二番煎じでしかない。既視感が強すぎて目新しさを感じない。二本の【ハルク】を観て『そもそも僕はこいつと相性が悪いんだな』と確信しました。

2003年版のハルクでは《怒りの感情が臨界点に達した時》に変身するというものでしたが、今作では《心拍数が200に達した時》に変身するという定量的な要件が設定されました。(〝若いのに心拍数が200を超えることなんてあるのか?〟とかいうツッコミは置いておいて。)なので、ブチギレたりしなくてもヒロインといちゃついてるだけで変身しそうになってしまう演出は面白かった。《怒り》を効果的に表現するための、ハルクのブチギレ顔のドアップもインパクトがありました。細かいところでの差別化を頑張ったのかもしれませんが、大同小異でほぼ一緒という印象は拭えません。最後の最後でぶち込んできた『ハルク・スマッシュ』はちょっと可愛かったですが。ウケの取り方も力技すぎる。


◆結論、ヒーローではない。

既視感が強いというだけで『あまり好きではない』と感じるのも乱暴な気がするのですが、『アメコミなのにヒーローじゃない』という所も好きになれない部分なんだと思います。馴染みのあるバットマンやスパイダーマン、最近知り合ったアイアンマン。出立がダサい事はさておき、皆一様にヒーローとして描かれています。僕が無意識のうちにアメコミ作品に期待しているのは、ヒーローである(あろうとする)事なんだと気付かされました。

《ハルク》は《ジキルとハイド》そして《キングコング》という、所謂古典モンスターがルーツにありそうなキャラでしたので、ヒーローとは対極の存在にみえるのも無理なからぬことかと。ヴィラン向けのキャラを無理矢理アメコミ主人公の座に据えようとした事が違和感の発端であったのかもしれません。

MCUはまだまだ観始めたばかりなのでよくわからないのですが、ハルクはかの有名な《アベンジャーズ》の一員として活躍することになるんですよね。単体作品の主人公として暴れ回るよりも、ヒーロー集団における力自慢(またはギャグ要因)というポジションならば、ずっと輝けると思いました。正直今作は刺さりませんでしたが、後の作品に向けての必要な種蒔きだと思えば、まぁ、、、。