さすらいの雑魚

実験映画のさすらいの雑魚のレビュー・感想・評価

実験映画(1999年製作の映画)
3.5
永瀬正敏が暴力的なヨリで少女を撮る、のを撮るカメラはヒキで撮る。
ほのかな狂気をまといつつ嫌がる少女をヨリで舐めるように撮るサディスティックな永瀬正敏を撮るカメラはどこまでもヒキ。
広くもない部屋で撮る者と撮られる者が揉み合うシーン、真剣な場面のハズなのにどこか滑稽で、半笑いしながらスクリーンに魅入るボク。
入れ替わったり、覗き込んだり、花瓶になったり。終幕に向けて手練手管を尽くし奇っ怪な映像を繰り出す様子には、才子が己を誇る傲慢も才気のかもし出す軽やかな明るさも感じられず、苦悶しながら吐瀉物を搾りだす酔漢の地獄絵図か、反吐を撒き散らしそれでもなお演じ演じさせ撮り撮られて呻吟する創造者の苦闘なのか、とにかく必死なのは伝わってくる。
何にそんなに頑張ってるのだろう?と考え込みながらスクリーンに魅入る傍観者なボクが映画館の暗闇に独りでいた。
そんな夜。