3104

こねこの3104のレビュー・感想・評価

こねこ(1996年製作の映画)
3.2
こねこが迷子になり、やがて家族の元に戻るまでの物語。
ストーリーはただそれだけ。加えるならチグラーシャ(「トラ猫」の意)と名付けられたこねこの迷子生活に、猫好きの男フェージンと彼の家に集まる他の猫たちの活躍(?)が絡めて描かれている。
ところがこのフェージンと猫たちのパートが、映画の魅力という観点ではメインであるといっていい。
勇敢なワーシャ、精悍なシャム猫イザウラ、いつも舌が出ているシャフ、芸達者なジンジン、隣の部屋からいつもやって来るプショークetc・・。
フェージンの部屋に集う猫たちのバラエティさと魅力といったら。そしてどの猫もCGか?無理矢理操作していないか?と疑わんばかりのパフォーマンス。
種明かしをすればフェージン役のアンドレイ・クズネツォフはサーカス団に所属する本物の「猫調教師」。出演している猫たち(含むチグラーシャ)は彼にしつけられた、いってみれば「劇団員」なのである。と予備知識を携えて観ても素直にすごいなぁ、よくこんな演技ができるなぁと思わざるを得ない。

猫たちの演技が映画をきちんとした、躍動的な作品にしているのは事実だ。動かずともただそこにいるだけで猫は可愛い。しかし劇中では常に演技をさせられている(ラストシーンである猫が他の猫にネコパンチを喰らわせるカットがあるが、あれはおそらくアドリブ?だろう)わけで、それは猫に肉体的および精神的な負荷を強いていないか・・とどうしても気になって仕方がないのである。
話はほのぼの、猫はもちろん愛らしいのだが、終始その「懸念」が拭えずに映画を心の底から楽しめなかったというのが偽らざる心境だ。

ローバジェットで手作りテイスト溢れる作品で、画質もそれほどよくない。しかしその画質が90年代前半あたりの質感や空気感を思い起こさせる。少し個人的なノスタルジィ。
3104

3104