ぴのした

十二人の怒れる男のぴのしたのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.0
面白っ…!!なんこれ。

陪審員の話ということで、会議室だけで話が進む法廷ドラマ。

「人を裁くとはどういうことか」みたいなゴッツ社会派映画かと思いきや、推理小説を読むような痛快さがあり、12人それぞれの人となりに触れるヒューマンドラマ特有のほろ苦さも。

裁判のシーンはほぼゼロ。事件の概要さえ分からない状態から話が進み、陪審員たちの会話の中でどんな事件だったのかが分かるようになっているのもゲームや小説みたいで面白い。

論理的な男、偏見にまみれた男、冗長な男、ひゃうきんな男、the労働者、良識ある老人、とそれぞれのキャラクターの役割が明確なのも良かった。非常に緻密な脚本。

見所は何と言っても、主人公が不利な状況を徐々に突き崩していく心地よさ。最初、明らかに有罪に見えるのに、証拠や推理を突きつけて、根拠を揺るがしていく様は名探偵のよう。

「本当に殺すつもりじゃないでしょ?」とか、「あのもうろくジジイの言うことなど信じられるか!」という言葉を引き出して相手の矛盾を自ら悟らせるシーンは鳥肌モノ。

この会議が本当に良い議論と呼べるのかは少し疑問だけど、エンタメとしてはかなり楽しめた。「疑わしきは罰せず」という司法の原点を突きつける社会性もあるし。

ただ今回は「無罪or電気イス」という究極の選択だから成り立つ話のような気はする。

日本では量刑まで裁判員が決められるんだけど、調べてみるとアメリカの陪審員は量刑までは決められないらしい。

ちなみに、この間見たカメ止めの上田監督のインディーズ映画『お米とおっぱい』は、この映画のオマージュというか、これをコメディ風に再構成したものだったんだなと気づいた。