自分たちが泣き、笑い、喜びや悲しみを誰かと分かち合い、色々不便も多いけどそれなりに充実した毎日を送れるのは、スケールの大きな話になるけど、長い進化の過程で獲得した知性のおかげだと思う。それが社会や文化を作り上げ、人の心を育てた。
それが人間が人間たり得る為に必要な要素でもあるように思われるけど、その外側にいるロバには人間はどう映っているんだろうか。
人間社会はいいことばかりじゃない。基本、自然の摂理の中で生きているロバに罪悪という概念はない。罪悪とは、人々が社会生活を営んでいく上で、どうしたって出てきてしまうものである。とするならば、ロバの目にはさぞ人間は奇怪に見えているだろう。理解出来ないわけだからね。
そうなると今度は、そうまでして人間が人間たり得る理由は何か。もし、他の動物のように生きられるならその方がいいのではないか。そんなことを考えてしまう。まあ、ここまでくると流石に面倒臭いからこれ以上考える必要はないけど、つまりはそういうこと。
或いは、進化の過程で人間が獲得したものではなく、失ってしまったものにこそ、人間と動物の境界があると言えるかもしれない。こっちの言い方のが、聖書っぽい感じもする。
洗礼を受けたロバ、バルタザールの長い旅の物語。