ゴト

タブウのゴトのレビュー・感想・評価

タブウ(1931年製作の映画)
3.8
ボラボラ島は日本人にも人気の観光地で、名前を聞いたことのある人も多いと思う。そんなボラボラ島を舞台に、実際にそこに住む島民を起用して制作されたのが本作である。

演出上の意図で以ってわざと素人をキャスティングすることはたまにある。しかし、この映画は少し違う。素人にリアルな演技を求めているとか、そんな理由ではない。歌い踊り、水辺に戯れる。そんなボラボラ島という楽園に息づく生活の様は、やはり実際の島民でなければフィルムに焼き付けることは出来ないのだ。それは実に生々しく、力強い。

しかし、見方を変えると彼等は演じているのではなく、楽園というセットを形成する為の一要素に過ぎないとも言える。実際、島民の中で主だった役を与えられたのは主人公の青年とヒロインぐらいで(ヒトウもかな?白黒のせいかアジア人に見えるけど)、他は皆、歌や踊り、打楽器の演奏をカメラの前で披露してばかりに見える。

ではそこまでして、リアルな楽園という舞台に拘ったのは何故か。思うに神話の世界観を描きたかったのではないかと思う。

一生純潔を守り、何人も男は彼女に触れてはならないなんてのは、禁断の果実に手を出してはならないと同じことで、ヒロインであるレリを連れ出し、ヒトウから追われる身となった主人公マタヒという図式も、タブーに手を出し、ボラボラ島という楽園を追放されたと言い換えることが出来るのではないか。

そして、そんな主人公を待つ未来が明るいわけがないというのも容易に想像がつくところである。
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