ゴト

サウンド・オブ・ノイズのゴトのレビュー・感想・評価

サウンド・オブ・ノイズ(2010年製作の映画)
3.8
何故サナは一人傘も差さずに雨に打たれていたのか、そして何故話しかけてきた大家らしき男性をスティックで叩いたのか。そのあたりを理解出来ないと「何か面白いことやってる映画」で終わってしまうかもしれない。

最も、自分もそれほど音楽に詳しくはないから、サナ達が繰り広げるテロの真の面白さには気付けていないのかもしれないが。

故に観客はもう一人の主人公、アマデウスの視点で物語を追っていくことになる。異彩を放つサナよりも彼の方がよっぽど普遍的だからだ。こうなりたかったという理想の姿を前に現実との差異に苦しむアマデウスの姿は、思うままに行動するサナよりも共感を得やすいのではないか。

独創的なアイデアとは対照的に「追う者」「追われる者」という、ストーリーの型としては古典的なものを使っているので、ルパン3世的な感じで見やすくはなっていると思う。

そして、そんな相対する関係性の二人がそれ故の共通項で以って最後に協力し合うのもまた上手いと感じた。自分を苦しめる音楽からの解放を目論むアマデウスは、町中に溢れかえる下らない音楽に蹴りを入れたいサナ達の企みを、大胆な方法で上書きする。

エンドロールで流れる「エレクトリック・ラブ」も、コミカルだけど洗練された映画の雰囲気に合っている。
ゴト

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