HicK

告白のHicKのレビュー・感想・評価

告白(2010年製作の映画)
4.5
《「気づく」を教える冷酷で激しい再教育》

【無実の裏の悪魔】
まず原作が凄い。中学生は殺人を犯しても少年法で事実上の無実。それに対し今作の先生の復讐計画の実行も結果として無実。実行犯であるはずの人物たち以上の何か恐ろしい悪魔の存在を感じる。

【悪魔を育てる「その他大勢」】
知らないうちに利用され、悪魔の存在を大きくしているのは、間違いなく「その他大勢」とされる生徒たちだろう。HIVを例に無知さがもたらす過剰な反応、集団の1人として属する事の安心感、人の人生を狂わす力を持っている事を知らない軽はずみな行動。などなど、思春期が持つ負の要素が大きく連鎖していく。

【監督の演出】
そこに中島哲也監督の個性むき出しの絵が炸裂する。ステレオタイプな邦画界の価値観で言えば「行き過ぎた演出=品の無さ」なのかもしれない。凝った撮り方や重い雰囲気の中のオシャレ感はまさにMV風。でも、ダークトーンを維持しながらオシャレ感を足すと不気味なホラーに感じる。タダでさえ過激な原作にさらに監督の過激な演出が合わさって居心地の悪さが増していると思う。とても良い。監督の頭の中をのぞいてみたい。

【俳優陣】
松たか子の生徒の髪を鷲掴みにするシーンには静かな凄みや恐怖を感じた。鬼の監督とそれに応えられる女優という関係性が生み出した芸術。木村佳乃や岡田将生もそれぞれが持つ異なった「怖さ」を好演していたと思う。

【総括】
全編を通して「自分の行動がもたらす意味を知らない」という「気づき」が足りない人たちが引き起こす無自覚の罪を取り上げているので、若者たちの未熟な点を挙げて「お前ら気づけよ」と言っているような裏のメッセージを感じる。手を汚しても無実という彼らに対し、手を汚さなくても最大の仕打ちをしていく教師の冷酷な再教育が痛烈に記憶に残る作品だった。
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