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告白の8637のネタバレレビュー・内容・結末

告白(2010年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

この映画を認知してから5年間、15歳になったらまず初めにこの映画を観ようと決め、生きてきた。結局それは受験勉強で叶わなかったが。だが、初めてのR15+指定の映画をこれにすることができてとても幸せだ。
原作とサントラは何周もした。どちらも共に私的かつ強烈な思い出があるが、肝心の本編にだけ手を出していなかった。

とりあえず、恐ろしい。

"下妻" "松子" "パコ"とやけにメルヘンな世界を映し出していた中島哲也監督の映像観がここでダーク路線に切り換わった。映像の暗さ。だからこそ際立つ光。いつものようにスローモーションを多用すればするほど逆に虚を感じる。他にも、落ちた水溜りは濁ってるわ、明るいBGMや効果音はサイコ味を際立たせるわで、観る自分の受ける心理的追求も大きかった。
その上、全編に止まずかかる音楽が大林宣彦の系譜すら継いでいる気がする。そして、この映画のテンポ感を明らかにオマージュした映画も思い浮かんだ。日本アカデミー賞で作品賞を獲ったように、多分この映画は邦画に生まれ得ない印象を生み出した伝説なのだと思う。

それは映像表現だけでなく、賛否両論の対象となったストーリーに対しても。
「告白」としてモノローグで進められる展開は原作通りでありながら、松たか子の冷徹さが単純ながらも森口の復讐心を具現化させる。彼女の倫理観には少し賛同できない部分もあると僕は思う。
ここに登場する中学生の"一昔前感"は否めない。風貌だけでなく、周りとの協調性の異常な強さも。「人孤ロししネ」を除け者への煽りにする演出で自分も心を痛めた。パンチが強すぎる。
僕は幸福にも大勢に背かれた経験がなく生きているが、それは甘やかされた事になるのだろうか。クラスに負の意味で異端な奴がいて、そいつを見下し、嘲笑えるのは何故か、と思えるくらいに不自由ない自分もこのままでは誰かをポイント稼ぎの道具として扱いそうで怖い。
事件自体は、もはや誰のネグレクトのせいでもない、総称して不運としか言いようがない凄惨さだった。
そして、どうしても小説では表現できなかったラストシークエンスはもはや泣きそうだった。修哉にとっての母性愛は誰に貶されようとも強かった、のかもしれない。
ただ一つ残る疑問点は、修哉の母がいる大学に森口が仕掛けた爆弾は、そこにいた他の"関係ない人"を巻き込んでいるのでは無いかということ。赤裸々に語らないキャラクターもあり、そこの真偽ははっきりしないままだ。


年齢制限によって手を出せていなかった中島哲也監督の映画で、まだ「渇き。」が残っている。すこぶる評判も悪ければ、ゴア描写もR18+レベルだと言われる。もっと自分が耐えられるようになったら挑みたいと思う。


追記:よく考えたら、少年法で守られなくなった"15歳以上"に鑑賞対象を絞ることって、観客に向けての残酷な復讐でもある気がしてきた。
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