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隣人は静かに笑うのSSDDのレビュー・感想・評価

隣人は静かに笑う(1999年製作の映画)
3.9
◼︎概要
近代歴史を教える教授はFBI捜査官だった妻を亡くし、子供は母親を思い塞ぎがちとなっていた。ある日事件が起きたことから隣人と親しくなり、隣人の子供同士親友となるが、隣人の夫の小さな嘘から疑心が生まれる…。

◼︎感想(ネタバレなし)
本作タイトルは昔から知っていたのだが、ようやく視聴できた。

秀逸な邦題のみにあらず内容も没入感の強い重厚なサスペンスで、知名度の高さも頷ける。

初めのプロットからセンセーショナルな映像から始まり、不穏さが漂い、すぐに平穏な生活を描くが少しずつ疑心が強まっていき、一体どのような展開になるのかと引き込まれていく。

果たして初めに起こる事件はなんだったのか、隣人の小さな嘘の疑いは主人公のパラノイアなのか、企てなのか…。

パラノイア気味に観られる主人公の焦燥観を名優ジェフ・ブリッジスが演じ切っているため、一定の緊張感から中弛みを感じなかった。

そして結末で唖然としてしまうような内容にはやられましたね。
社会風刺も効いた、間違いない不朽の名作スリラーでした。













◼︎感想(ネタバレあり)
・社会風刺
ユナボマーのモンタージュなどが映り、近代史がテロを扱うという内容であったり、旗と呼ばれる犯罪者レッテルのせいでの誤捜査。テロと捜査についてのアメリカの暗部を色濃く風刺している作風。
隣人トラブルという小さなスケールではなく、大きくテロを扱う作品だとは知らなかったためかなり先入観とは異なる作品だった。

・加害者の遺族
加害者のプライバシーついては被害者側を手厚くするべきだとは思うものの、当事者ではない遺族が糾弾され社会的に抹殺されるのはいたたまれないことだ。
アメリカは基本的には殺人犯の両親に対して、"あなたは関係ない、あなたの人生はあなたのものだ"と励ましの手紙を送ったりで日本のようにその周囲を糾弾する傾向にはないがテロは別なのだろうか。

・テロの成功というラスト
なんという胸糞展開。
主人公を引き込む形ではなく、疑いを強くし敵対する駒として誘導するという手法で取り込んでいくのはなかなかの戦略。
子供を見せてミスディレクションを誘い、FBIの敷地内に無理矢理爆弾を運ばされていたというラストは少々強引なものの、主人公と同様に唖然としてしまった。

テロ側の成功という悍ましいラストはカタルシスが凄まじい。また組織の最小の犠牲でしてやったとテロ側はほくそえむのであろうという繰り返される悪夢が、アメリカの暗部が終わらないことを風刺していて恐ろしい作品でした。
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