青山祐介

クリスマス・キャロルの青山祐介のレビュー・感想・評価

クリスマス・キャロル(1938年製作の映画)
3.0
今日はクリスマスです。子供のように、素直な感謝と祈りを捧げたいと思います。
『クリスマスおめでとう。神よ、私たちをお恵みください。
みんな一人一人を!』
チャールズ・ディケンズ「クリスマス・キャロル」村岡花子訳

「クリスマス・キャロル」は、いままで幾度となく映画化されてきました。その中の1本を選ぶとしたら、といままでに観た映画を振り返ってみました。古い人間には旧い映画を、というわけではありませんが、私にとって一番心に残っている映画と言えば、この1938年の作品になります。子供の頃にはじめて出会ったクリスマス・キャロルの映画であるというだけでなく、その見事に再現されたヴィクトリア朝の雰囲気や、白黒の美しい映像や、オーウェンの扮する魅力的なスクルージ、そして何といってもディケンズの≪クリスマスにたいする思い≫が子供の私にも伝わってきたからです。この思いは役者たちをも変えていきます。役者たちは演技をしているのではなく、役者たちのなかに≪クリスマスのこころ≫が顕現しているからです。クリスマスの心は、すべてのクリスマス・キャロル映画に感じることができます。映画を観る私たちの上にも、スクルージを演ずるレジナルド・オーウェンや、アルバート・フィニーや、ジム・キャリーの上にも、過去、現在、未来の精霊たちが訪れてきているのです。それゆえにどの俳優の演技も素晴らしいものでした。何と楽しそうに意地悪なスクリージを演じていることでしょうか、それは、やがて来るであろう過去と現在と未来の精霊の訪問を誰もが知っているからです。それほど、この物語はクリスマスには欠くことのできないお伽噺なのです。
『わたしは羽根のように軽くて、天使のように楽しくて、子供のように愉快だ、……クリスマスおめでとう』
スクルージは子供のようにロンドンの街を駈けまわります…私たちも「子供のように…クリスマスおめでとう」と、会う人すべてに声をかけたいと思います。クリスマスを祝福することによって与えられる喜びと感謝、それが「クリスマスの魔法」にほかなりません。
『私は、過去、現在、未来の精霊たちの教えの中に生きます』エブニゼル・スクルージ
青山祐介

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