よしまる

空軍大戦略のよしまるのレビュー・感想・評価

空軍大戦略(1969年製作の映画)
3.8
幼い頃は金髪で英語で青い目は等しく「外人さん」で、アメリカ人とイギリス人が別の国の人という認識はなかったのだけれど、こうして見返してみると英国俳優たちの豪華でカッコいいことと言ったら!
  
てことで、イギリス勢中心に英・米・西独の合作で作られた「空軍大戦略」を再見。「バトルオブブリテン」という世界最大規模の航空戦の歴史をイギリス出身の有名俳優総出演で描く、よくあるオールスター映画でもある。ローレンスオリヴィエ、クリストファープラマー、マイケルケイン、ロバートショウ、イアンマクシェーン、エドワードフォックス、ハリーアンドリュース、英国イケメン集結に男でも痺れる。
オールスターの戦争映画とは言っても、役者の見どころを多数用意し安っぽいメロドラマに持っていく日本のようなことはなく、史実に基づき淡々と戦争を描くのがすごくいい。

ボクが生涯に1番読んだコミックは松本零士の「戦場まんがシリーズ」。特にヒコーキものは少年の夢とロマンを詰め込んだ名作ばかりで、大空に散った若い命に想いを馳せると今も胸がギューってなる。

手足が吹き飛び血糊と切株地獄の陸戦もの映画よりも、シンプルで呆気ないそのぶんだけ儚いことこのうえない空中戦の凄まじさ。超絶カッコいい若かりし日のマイケルケイン隊長でさえ、機銃を浴びれば一瞬で爆死、死に際の表情さえ見ることはできない。お涙頂戴など目もくれず、ドラマチックさに欠ける分かえって戦争の冷徹さを物語る、まさに鉄の棺桶の歴史そのものだ。(そのぶんドラマ目当ての人には退屈な映画か)

レプリカ総動員の実機での撮影、ラジコン模型や合成を駆使して、ドッグファイトを迫力満点で見せる情熱は、空戦映画の紛れもない最高傑作として歴史に名を残す。
メッサーやスピットの戦いを図録や写真で夢に描いた男の子が昭和にはたくさんいた。ジェットもミサイルもなく、照準器はアクリルの板切れだった時代、ほんとに小さなプロペラ機に乗ってコンピュータ制御もレーダー機器も何もない中をよく大空を飛んで戦争していたと思う。だからこそ(不謹慎な話をしているのは承知の介で)大空を駆ける兵士たちに憧れたんだろう。それを今なおこうして体感できる映画ってすばらしすぎる。

これはF1がオートマな時代にフォードvsフェラーリに痺れるのにもちょっと似ているのかもしれない。

ドイツ側はドイツ人俳優を使いドイツ語+英語字幕に徹しているのもいいし、男性上位な時代ながら女性の活躍した婦人部隊の存在にもスポットを当て、戦争には無関係な農民や一般市民も描くなど、地味な物語ながら戦争映画としての見どころを凝縮しているのがお見事。製作ハリーサルツマンと監督ガイハミルトンの007コンビ。そして出演している俳優たちの活躍する硬派な英国アクション映画の佳作は他にもたくさんあり、まだまだ観たいものが尽きない。

追記 今後いちいち書きませんが、イデオロギーとエンターテインメントは別物ですので戦争大好きとか右とか左とかそういう勘繰りはご遠慮ください❣️
追記Ⅱ 音楽サイコー!なのだけれど使うのはイギリスドイツの活躍シーンどっちかに絞ってくださいw
追記Ⅲ 邦題なんなん?