A8

アメリカン・ビューティーのA8のレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
3.5
アメリカ合衆国、、この国のどこにでもあるような家庭の誰もが起こりうるような完璧なる“崩壊劇”が容赦なく描かれる。

“仮面だけの家庭”その言葉を主人公が話したように、実際そうだった。
綻びができ、みるみる糸がほつれていき、不思議なことになぜか残り一本で繋ぎ止められているようなモノであった。

主人公のまるで人生に絶望していた、まずそのような考えすら思いつかないほど“日常を送る”ことにすっかり慣れてしまい麻痺しているようだったが、ある日、娘の発表会でたまたま出会った女子高生に一目惚れをする。そこから彼の脳みそに電流が走ったかのように麻痺は解かれ、彼はまた走り出したのである、、。

一家の大黒柱が娘の友達に“恋”なんて、、。
そんな大それたことは置いといて、こういった毎日がつまらなさすぎて麻痺してしまう。簡単に言えば“生きている”のではなくただ“存在”しているだけの日々から甦ることはなかなか羨ましいとも思えるのではないだろうか。

しかし、この家庭だけが問題あり。というわけではないようで、、隣に住む軍人が大黒柱に居座る過程ではもっと悲惨ともいえる出来だった、、。

このように悲惨とも言える、もしくはその素質を持っている家庭が山のほどいることを、
“日常”に潜む簡単な“ほつれ”をうまく巧みに見つけ出し、みるみる引っ張っていって、簡単に丸裸にそして、崩壊させていく。この一連の描き方はまさに芸術であった。

ヒステリックな母親、親に絶望する娘、家族より娘の友達に興味がいく父親、、崩壊。
これこそが“アメリカンビューティー”とはなかなか皮肉が効いている。

怒り、、しかしこの世の中には美しい景色にあふれている。その齟齬で胸が張り詰めるが、そんな時こそリラックス。そうしたら自然と人生に感謝する時がくるだろう。いつかわかる。
麻痺のループ、、おそろしい。
そしてはたから見たら実に素晴らしい。
A8

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