A8

関心領域のA8のレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
人間の順応性とは、、恐ろしい。


歴史上において最悪の大虐殺が起きた
アウシュヴィッツ強制収容所。
その隣に建てられた豪華な家には所長とその家族が住んでいた。

この作品で印象的だったのは、
となりで悲鳴や銃声、人が虐殺しているというのにも関わらず幸せそうに暮らしいてる家族の姿なのだが、
ある日、所長が配置転換になりアウシュヴィッツを離れることになるはずだった。
だか、奥さんはこの場所が好きで意地でも離れようとしない、、
結局、奥さん含む家族だけ残り単身赴任をすることになる。

私たちがいま暮らしているこの街に対して少なからず愛着があるだろう。
だが、それは最初からあるものではない、、
そこで暮らしていくうえでだんだんと芽生えるものだ。
それと同じようにこの家族は、
そういった歴史的大虐殺がら行われ、悲鳴や銃声が聞こえることすら忘れるかのように、その場所で生活を営んでいるのである。
それも幸せそうに、、

そういった背景ともう一つ。
当時の価値観と取り囲む人的環境いったものもあるだろう。

この国はヒトラーにより洗脳されていた
現代では考えられない事でさえ
当時の社会全体がイエスと心から思っていたのだろう。
同じ人間なのに、、
社会とその環境が変わるだけでこれだけも人は恐ろしくなってしまうのかと。


効率化のためあのガス室が作られることになる。
それが決まった後、その発起人は階段を降りていく、途中嗚咽をしながらもまた一段と降りていく。
急に暗闇が、、
そして当時から時代が切り替わり
現代の収容場跡地に遺されている資料センターで働く従業員たちが急に映し出される。

そこで、私はこう思った。
人間の順応性がこれだけも恐ろしい方向へ向いてしまった、、それもほんの80年ほど前。
現代働く彼女たちとほんの80年ほどしか変わらないのである。
そこでさらに人間の順応性の怖さを知る。
さらに思い返すように、、

その発起人の嘔吐の意味は、“人の心”というものの最後の現れなのだろうか、、?

また、そんなことがもう怒らないためにもこの過ちを忘れてはならない。
負の遺産が遺されている意味を強く感じた。

この発起人?から暗転
その考えがつくった負の歴史の結果が
現代の映像となって切り替わるという演出は強烈であまりに印象的だった。



この作品の映像が綺麗なのがまた怖さを引き出してくるのだ。
花や緑、川や子どもたちの笑い声
その隣には最悪の虐殺が行われているという現実。
負のコントラストのように描かれていた。

色使いが特徴的だと思った。
白を基調→病院をイメージさせる、、など
色を使った連想や工夫が施されていた。

もう少し、、
所長宅の日常との対比が多めで描かれていたとしてもよかった気がする。
A8

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