原作者の吉田篤弘氏が「八嶋智人さんをイメージして書きました」という小説の、そのものずばりなキャスティングによる映画化。台詞もストーリーもほぼ原作に忠実に再現されていて、そのせいか「これまで何度も原作を読み返すたび少しずつ頭の中で出来上がってきたつむじ風食堂」と「いま目の前のスクリーンに映し出されているつむじ風食堂」がとてもよく似ているにもかかわらず、却って僅かな違いがひどく気になるというか、その違和感ばかりが序盤はやけに目につきました。
が、物語が進むにつれ次第にその感覚は次第に薄れていきました。いや、それはちょっと違っていて、その違いを受け入れるとか良しとするとか言うよりはむしろ、その違いこそがいとおしくなるような、そういう穏やかな気持ちが静かにわいてきたんでした。あの小説を読んだひとはきっと誰もが自分だけの「つむじ風食堂」を思い描いていて、それはあなたにとってもわたしにとっても「ここ」にある場所なのだな。と思えたのがうれしかった。小さな、静かな映画だけれど(そして真冬の物語だけれど)、ほっと心があたたまりました。あらためて、いい話だなあ。
でも、これ、原作を読まずに最初から映画を見たらどんな感じがするものなんだろう?