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ミッドナイトクロスの継のネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトクロス(1981年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「音」のする方へ, ガンマイクを振る.
枝葉を揺らす風, 囁くカップル, カエル, フクロウの鳴き声, そして..... “Bang !”

映画に音を付ける <音響効果> を仕事とするジャック(トラボルタ)は、ソースとなる音を野外で収録中に偶然、車の転落事故に遭遇する。
単なるパンクによる事故と断定する警察、だが破裂音より一瞬先に『銃声』を聞きとめたジャックは疑問を抱き、車中から救出したサリー(ナンシー・アレン)と共に真相究明に乗り出すのだが... 。


写真で脅迫するだけのハズが、サイコな実行犯の暴走により運命を狂わせていくジャックとサリー。
アントニオーニ『欲望』の写真(静止画)を、映像(動画フィルム)に置換し、デ・パルマらしい過剰な演出で観せるサスペンス・スリラー。

本作は「音」へのこだわりが特に偏執的で、例えば音響機材はスイスが誇る世界一の音響メーカー “NAGRA” 社製のオープンリールが当たり前の様に次々に登場する。中でも、バークが電話の盗聴に用いるNAGRA SNNはウォーターゲート事件の盗聴にも同型機が使われたという逸話を持つ代物だ。

印象的なのは、
このNAGRAを駆使して <録音された音声> の巻き戻し~再生を何度も何度も繰り返し、銃声のタイミングにシンクロさせた動画の1コマだけに僅かに現れる閃光と銃煙を発見するシーンの綿密さと、
サリーが取り付けたマイクが拾う <生の音声> だけを頼りに、一音も聞き漏らさぬよう追跡するシーンのスリリングさだ。

録音された、いつでも繰り返し再生可能な記録音声と、生の、その場1回限りの音声。両者の特性を効果的に観せるシーンが意図的か偶然かは分からないけれど、
例えば、早々と演奏活動から引退したグレン・グールドは、より完璧な演奏を後世へ残すべく録音~編集作業に執心した。
反対に、フリージャズの巨星エリック・ドルフィーは “音楽は一度奏でられると空気の中へ消え、二度と取り戻す事は出来ない” と、ライブ或いはアドリブの一回性の意義を説き、クラッシックの素養と高い演奏力を持ちながらもジャズのスリリングな世界に身を置いた。

ドルフィーの言うようにサリーの声は消え去り、その死によって新たな声すらもう聞く事は出来ない。
その代わり、二度と聞きたくないハズの、当たり前だが完璧な悲鳴だけが永遠に残るという結末のなんという皮肉、、、見事 💯!
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