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みなさん、さようならのemilyのレビュー・感想・評価

みなさん、さようなら(2012年製作の映画)
3.1
一生団地の中で生きていくと決めた12歳の悟。団地にはなにでもそろってるので、団地内で十分生活できるのだ。そんな息子の決意に理解をしめして見守り続ける母。やがて悟は団地の中の大好きなケーキ屋さんに就職し、団地の中で同級生と婚約までする。同級生はどんどん団地から卒業していき、悟は一人になる。彼には団地を出られない理由があった。それを乗り越えて団地から出ていけるのか・・

時代設定は1980年前半~1990年後半で、団地がたち並ぶようになり、やがて外国人が増えていったりした時代設定をそのまま再現している。

なんといっても悟演じる濱田岳が12歳~30歳まで演じているのだが、違和感ないのが素晴らしい。素晴らしく小柄で童顔なのでそれができてしまう。

いわゆる引きこもりというのとは違い、ちゃんと毎日のスケジュールをこなし、毎日目標をもって生きているのだ。決して投げやりになることなく、日々成長する訳でもなく、同じ毎日を同じように過ごしていく。周りが成長していく中で、彼の時間だけ止まったままだ。

団地から出れない理由はずいぶん後のほうになって語られるので、前半と後半では違った見方ができる作品にもなっている。後半では日々鍛えたあげてきたものが誰かの役にたち、彼が望んでいた、誰かを守ることができた瞬間だ。

15年の月日は非常に長い。しかし彼にはこの15年が必要だったんだろう。自分を見つめ直すために、長すぎる時間だが、気が付いたら15年なんてアッという間なんですよね。

どこにいても要は心次第。人なんて誰しも狭い世界で生きてるし、新しいものを知ろうともしない。しかし知りたい気持ちが自分の世界を広げていく。どこにいても誰といても、結局は自分の心次第なのだ。晴れやかな卒業、でもこの15年は全く無駄じゃなかった。だって誰かを救うことができたんだから。そうして自分自身も救うことができたんだから。
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