emily

トウキョウソナタのemilyのレビュー・感想・評価

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)
3.7
東京で暮らす4人家族の佐々木家。ごくごく平凡な家族。だが見た目とは裏腹に、ピアノを習ってる事を隠してる次男、母はなんだか毎日つまらない日々を過ごしてて、父はリストラにあい、そのことを家族に言えないでいる。長男はアメリカ軍に入隊したいと言い出す。平凡な家族が崩壊へ向かっていく。

家族には役割がある。その役割分担をしっかりとたたきつけてくる。父はお金を稼いで家族を守る、父は絶対的な存在、母は母らしく、子供は子供らしくを忠実に行ってきた家族。家族の食卓は窓越しや柱越し、何かを通して映し出される。他人の家族を覗き見てるような感覚に陥る。そうして何か不吉な予感も感じさせる。

幸せそうに見える家族の崩壊はもうすでに始まっている。そうして極め付けの役割分担が壊れる瞬間が、長男がアメリカ軍に入るといったときだ。彼は家族を守るだめだという。その役割は父親のはずだった。ここからの崩壊の仕方はコメディともホラーともいえる、シュールすぎる物語の展開。畳みかけるように悪いことが起こっていく様は、コメディにしか思えない。

しっかり壊れてしまった家族にはもう失うものがない。そうやって壊す必要があったから、唐突なストーリー展開なのかもしれない。そこに見える一筋に光は、家族に照らす希望の光。壊れたものを元通りにする必要はない。元通りには戻らないのだ。でもそこからまた新しく作っていけばよい。役割分担なんて必要ない。足りないものを補って、また新しい形の家族を作ればよい。
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