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子猫をお願いのSPNminacoのレビュー・感想・評価

子猫をお願い(2001年製作の映画)
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高校時代の友達グループは卒業後も度々集まるけど、今では微妙な距離もある。会社員と無職、地方とソウル、孤独と友情、夢と現実。気持ちは少女のままでも、変わらず友達でい続けるには世の中はあまりに世知辛い。
高卒女子5人の中で両極端なのが、証券会社に就職したへジュと今にも壊れそうなボロ家暮らしのジヨン。ぺ・ドゥナ演じるテヒはちょうど中間に位置して、グループの橋渡しを担う役。そしてジヨンが拾った子猫。へジュに贈られた後ジヨンに返された猫は、その後も飼い主を替えていく。居場所を探してるのか自由になりたいのか。子猫という重荷を抱えて、足止めされた時間が過ぎていく。社会、特に家父長制に縛られた女子たちのモラトリアム。
家を離れたくても離れられないジヨンとテヒ、そして家から1人で出られない詩人。双子にはいつもお互いがいるけれど、へジュには会社や家族は自分の家にはならず、結局友達や幼馴染の男子が家みたいなものである。うっかり締め出された家の外、寒空の下5人が身を寄せ合う。家がなければ生きられない、でも家には閉じ込められたくない。猫のように。
やがて3人と猫はそれぞれの家を見つける。それは制度や血縁家族とは違うので、変わるかもしれないし変わらないかもしれない。でもひとまず重荷を手放して、ここでないどこかを目指すオープンエンドな旅立ちでいい。
携帯メールやタイプライターで打ったテキストの出し方(言葉は自由に外へ放たれる)や、オフィスの窓のモザイクとジヨンの描いたテキスタイル画がシンクロしたりするのが面白い。そして具体的説明を省いた余白に、煙草や刃物(縁切りの象徴?)、額縁の使い方や日常風景のディテールがちょっとした意味を持つ。但し、そうなるだろうとは思ったけど、残酷な展開も挟まるので容赦なく…終盤のジヨンのあの扱いはあんまりじゃないの。
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