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座頭市のcinemakinoriのレビュー・感想・評価

座頭市(2003年製作の映画)
4.3



“そんな狭いところで、刀そんな風に掴んじゃダメだよ”




北野武流アート時代劇。
数学的アクション技巧と芸術的サウンド兼拍子を徹底的なエンターテインメントととして拘り抜いた本作は、完全に賞レースへエイムを向けた多様性に富んだ力作!
まともにエンタメ創らせたらこうなるんだぜ!と言わんばかりのわかり易さと観易さは流石。

全般、銀残し効果の甲斐あってか、ロートーンの中に映えに映えるバイオレンス描写が正にアート。
無駄なチャンバラは要らんし、大袈裟な殺陣も嘘くさい。
そんな事を真っ向からぶった斬ってくるたけしイズムは、前述の通り実に数学的であり哲学的。
殺陣の見せ場のひとつである、切り付けるシーンや立ち回りそのものを敢えて省略化させ、後の死体の並びや状況で、その立ち居振る舞いや凄さを観る側に連想させる手法は、めっちゃくちゃ計算された方程式だから納得させられるしその場でキチンと答え合わせが出来るように撮られている。


所々でぶっ込むリズムネタや小コントも、しっかりとチープ感を狙い、時代劇との相違性をアートとして見せてくれる。
こういう点が賞レースを意識した“たけしイズム”であり、日本人よりも海外でウケる技法と言えるかもしれない。
金髪、モダン音楽、LGBT、ストンプ、タップダンスという、時代劇、いや映画としての概念を抜けた多様性もまたそのエビデンスとして大いに意味を齎している。


ストーリーの脚色やアレンジなどもはや全くと言って良いほど重要視していないのは、映画ド素人の私でもよくわかる。
北野監督が伝えたいのはそこじゃない。
そこを楽しむなら勝新のソレを観ろと言わんとしてるのがひしひしと伝わってくる。

芸術家として、芸人として、そして映画監督として、徹底したアート時代劇という視点こそが、この作品の最大の魅力でありウリなんじゃないかと。




そんな理屈はどうであれ、とにかく“市”が格好良いゼ!!
キレっキレのたけしを存分に味わえる作品はなかなか貴重す。


キャストも豪華
浅野忠信、岸辺一徳、柄本明、石倉三郎、樋浦勉等々、、、錚々たる面々が脇を固めているお陰で、作品自体を集中して楽しむ事が出来る。


個人的に、
たけし映画の中でもエンタメ枠ではナンバーワンの作品(アウトレイジが多数だろうけども)

純粋に作品としての三選を挙げるとするならば
【その男凶暴につき】
【キッズ・リターン】
【菊次郎の夏】

かな。

と言うか、【首】を早く観たいのだがなかなかタイミングが合わずに未だ観れて居ないのが悲しい、、、







“いくら目ん玉ひん剥いても、見えねぇもんは見えねぇんだけどなぁ”
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