青あお

タクシードライバーの青あおのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.6
“You talkin' to me?”

タクシードライバーのトラヴィス
退廃した社会に毒づきながらも無気力に毎日をすごしている。
だが、鬱屈した日々の怒りと悲しみはある日を契機に爆発してしまう事に…。

この作品を理解するにはトラヴィスが「ベトナム帰還兵」だという事は抑えておきたいポイント。
当時のベトナム戦争後のアメリカの社会情勢も理解しておくとよりわかりやすいですよね。

トラヴィスはアメリカのために命を懸けて戦い、その結果、社会に自分の居場所を失ってしまった、そういった孤独な男の話しでもあります。

戦争の後遺症で不眠症に苦しむ男が朦朧とする意識のなかで見たアメリカの社会はどこか白々しく腐敗と堕落に満ちているように感じられた。

毎日の生活で怒りを溜め込みPTSDに苦しむトラヴィスが鏡の中に見たものは根拠のない正義を身にまとい、思い通りにならない「歪んだ社会を変革しようとする」狂気の英雄の誕生だった。

今でいう「無敵の人」の誕生でしょうか、彼の言う独りよがりの正義には、反体制であることから同じ境遇にいる人々には説得力をもって響くらしい。
トラヴィスの主張には共感できるところがあるのでしょう。

このあたりの展開に、まだ思春期だった僕はそりゃあ混乱しましたよー。
トラヴィスの行動は「正義」に基づくものなのか?
そもそもトラヴィスの主張は正しいものなのか?

今では簡単に暴力を伴う正義なんてないってわかるんですけど、初めて鑑賞した際に僕はトラヴィスをどこかダークヒーロー的にとらえていて、魅力がある人物として見ていたのも事実です。
なんかロックっぽいし、笑。

今でもこの映画のトラヴィスと同種の感性をもつ人が起こす事件は後を絶たないように感じます。
ある種の普遍性のある症状なのかはわからないけれど、今もトラヴィスの様に社会を俯瞰から眺めふつふつと怒りを募らせている人たちが沢山いるんだろう。

その事を逸早く切り取ったこの作品は先見の明があったと思うし、今も名作として語り継がれるだけの説得力のあるテーマなんだろうと思います。

モヒカン、一度はしてみたいような
何かのスイッチが入りそうな髪型ではある、笑。
青あお

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