青あお

街の灯の青あおのネタバレレビュー・内容・結末

街の灯(1931年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

“映画史に残るラスト”

これ以上ないくらいネタバレしてまーす

盲目の花売り娘に一目惚れしたチャップリン(浮浪者)が彼女の生活のため、目の手術費用を稼ぐために悪戦苦闘する物語。

花売り娘はチャップリンの事を(盲目ですから)お金持ちと勘違いするんですよね。
勘違いをされたチャップリンは、必死にお金を稼ごうと奮闘します。

自殺を止めるシーンは今のお笑いでも多用される基礎的な動きですし、ボクシングのシーンでのパントマイムは思わず噴き出してしまうほどの素晴らしい出来です。

なんとかお金は工面したものの、警察に逮捕されてしまうチャップリン。

時は流れ、出所したチャップリンは偶然、あの花売り娘を見つけます。
花屋を開店し目も見えるようです。

チャップリンがガラス越しに凝視している事に気づいた花売り娘は、「あの人、私の事が好きみたい」とおどけながら、浮浪者であるチャップリンに施しをしようとします。

彼女は一輪の花とコインをチャップリンに手渡します。その時、“手の感触”でお金持ちだと思っていた男が実は浮浪者だったと知るのです。

「You?あなたでしたの?」

「Can you see now?見えるようになった?」

「Yes, I can ええ、見えますわ」

チャップリンは形容しがたい複雑な笑顔で彼女を見つめます。

そして、余韻を感じる間もなく暗転して映画は終わります。

初めてこの作品を観た時に僕はチャップリンの無償の愛に号泣したものです。
でも、歳を重ねてから観るとまた違った印象をうけるんですよね。

花売り娘は戸惑っているように感じるんです。白馬の王子様だと思っていたら浮浪者だった、という失望に見て取れます。
チャップリンの方も見られたくない姿を見られてしまった“バツの悪いはにかみ”を浮かべているように見えます。

チャップリンはいつも喜劇の中に悲劇を悲劇の中に喜劇を描きます。
その法則に従えばひと筋縄ではいかないエンディングなのかもしれません。

観ている側の年齢や社会値、価値観の違いで全く違った結末に受け取れるでしょう。だからこその映画史に残るラストなのかな、と。

勿論、どちらに受け取っても自由ですよね、観た人それぞれの結末で良いと思います。
青あお

青あお