亘

ロシュフォールの恋人たちの亘のレビュー・感想・評価

ロシュフォールの恋人たち(1966年製作の映画)
4.2
フランスの田舎町ロシュフォール。この町に暮らすデルフィーヌとソランジュは双子姉妹で恋人を探していた。年に1度の祭りを目前にお祭りムードが高まる町で2人に出会いが訪れる。

『ラ・ラ・ランド』にもオマージュされたミュージカル作品。メインはデルフィーヌ・ソランジュの双子姉妹の話ではあるんだけど、その周囲の母親やイベント屋コンビなどの恋も描いた群像劇。小さな町で男女が出会い、または出会いそうですれ違う、恋の予感を感じさせる祭りの前後4日間を描く。ミュージカルの音楽やダンスがカラフルで楽しいのも見どころ。双子姉妹の歌は元気だし、イベント屋の2人の"Arrivée des camionneurs(キャラバンの到着)"はCMでとても有名。歌とダンスのシーンだけでも見る価値のある作品。

物語は祭りの2日前(金曜日)から始まり、祭りの翌日(月曜日)に終わる。金曜日は主にロシュフォールの住民や町の人々の紹介で各登場人物の関係とか過去の恋愛がなんとなく明らかになる。土曜日には徐々に各人の話に共通点が見え始め、シンクロし始める。とはいえなぜかすれ違い続けて狭い町の中でニアミスはするのに会えなかったりする。日曜日の祭り当日、「ここで皆つながるのか?」と思わせつつなぜか交わりそうで交わらない。そして月曜日になってようやく突破口が見える、とかなり焦らしてくる。

この作品が描いてるのは、ロシュフォールの人々が"恋の予感"とか"恋の余韻"を楽しむ(少し浮ついている)様子だと思う。「こんな理想の人がいるはず」「今日こんな人に会った」「あの人にまた会いたい」と出会いに期待してたり、一度の恋愛をずっと忘れずにいたりみんなふわふわしている。直接行動に移せば良いのに、偶然に任せるからずっとすれ違い続ける。だからこそロシュフォールの人々は恋の夢から覚めないで楽しそうなのかもしれない。

祭りの翌日ようやく男女たちが出会う。予定調和のようでもあるけど、散々すれ違いつづけた分各ペアが個々についに出会った瞬間どこかほっとした。取り残されたデルフィーヌに最後の最後で希望を見せるラストシーンは印象的だった。


印象に残ったシーン:双子姉妹が歌うシーン。イベント屋の2人が"Arrivée des camionneurs(キャラバンの到着)"を披露するシーン。日曜日に次々に皆が出会うシーン。

余談
原題は『ロシュフォールの娘たち』です。双子姉妹を演じた2人は本当の姉妹だそうです。
亘