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暗殺のオペラのNMのレビュー・感想・評価

暗殺のオペラ(1970年製作の映画)
3.8
観て良かった。地味なので危うくスルーするところだった。

亡き父のゆかりの地を訪れた男。
英雄だった父の面影はいまも人々のなかに強く残るものの、町全体がなんともおかしな雰囲気……。

主人公はアトスで、その父もアトス。
息子が父の死の真相に迫っていく。
はじめからとりわけ気味の悪い女性はいるが、それがそのまま犯人ではないだろうと予測させる。他のみんなも奇妙だし第三者が出てくるのかもと。
父子が同姓同名のせいで現実と過去が混濁していくような感覚を覚えるのはさながら魔法。

しばらく観ているとわざわざ邦題にオペラと付けたわけも分かってくる。音楽のほぼないヴェリズモといった感じ。闘牛士、死、美しい女性、という要素はそのまま『カルメン』を思わせるし、そもそも重要な場面が劇場で行われたりするなどオペラ的要素がたくさん散りばめられている。

笑顔で幸せを装っているが何かとんでもないことをしそうな女、微動だにせずスピーカーに聞き入る男、不気味な美声で歌い上げる男など非常にアーティスティック。

しかしストーリーは意外にしっかりしていたので個人的にはちょっとおかしみを感じてしまった。
英雄とか伝説とはこんなふうに作られることも多いのだろうと感じた。
アトスが逆光で黒いシルエットのみになるシーンが気に入った。

終わり方のばっさり感も好み。
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