りっく

28日後...のりっくのレビュー・感想・評価

28日後...(2002年製作の映画)
3.0
「ゾンビ映画」はゾンビ自体が怖いのではない。
動きは遅いし、単体だったら勝てる相手である。
では「ゾンビ映画」がここまで観客を魅了し続けるものは何なのか。
その1つはゾンビがほぼ人間の形態を保っているということだと思う。
人間誰もがムカついて死んでほしい相手の2,3人はいるはず。
だが、実際にその相手を殺してしまえば罪になる。
だが、ゾンビならば罪にはならない。
ほぼムカつく相手の原形をとどめ、しかも弱体化した相手を容赦なく殺せるカタルシス。
ここにこそ、「ゾンビ映画」の魅力の1つがある。

だが、本作のゾンビは走る。
つまり、ゾンビと人間の区別がほぼつかない状態になっている。
だからこそ、本作でゾンビを監禁したり殺したりすると、罪悪感が生じる。
その罪悪感の対象は「軍隊」である。
ダニー・ボイルはこの「軍隊」へのあからさまな批判をするために、「ゾンビ映画」の体を借りているのだ。
ただし、それがあまりにも安直なため、特に後半は面白味がなくなってくる。
「軍隊」がただ単に愚かでバカな人間どもというステレオタイプな描写に留まっているのだ。

画面の隅々までこだわりは感じるものの、斜に構えた作りも好みではない。
暗すぎる画面の中で、執拗にカメラをカチャカチャ動かし、スピーディでスタイリッシュな世界観を築く。
だが、その狙いは分かるものの、物語にとにかく落ち着きがない。
物語の推進力が希薄な割に、それを演出で無理矢理スピードをつけようとするから、こういうことになる。
ダニー・ボイルの嫌な部分が炸裂してしまった作品。
りっく

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