そのじつ

祇園の姉妹のそのじつのレビュー・感想・評価

祇園の姉妹(1936年製作の映画)
4.0
「真実を描きすぎていてけしからん」と上映を差し止められた逸話が凄い。
偶然続けて見た「突然炎のように」(フランソワ・トリュフォー監督)とリンクする「社会的抑圧に抗いもがく女性」をキーワードに感じた。
どちらも女性解放運動の機運が高まる前の時代が舞台となっている。

まず関心をひいたのは、登場人物のしゃべり言葉。
よどみなく美しい、本物らしい京ことばが心地よい。
そしてそのまったりと優しげな抑揚でブスリと相手を刺す様が凄みがある。
「あほくさ!」「てんごやがな」と相手をいなし、舌の根の乾かぬうちにそれが自分を売り込む媚態に変わる様。
スルリスルリと相手の懐に入り込むような…それを憎からず思ってしまう男性の気持がわかるような…なんとも巧みで本当らしい感じがする。
祇園などで遊び尽くしたという溝口監督の面目躍如なのか(NHKの放映後解説で山本晋也カントクが当時の助監督だった方に聞いたと言ってました)。

花柳界の舞台裏、男の単純でだらしない様子、女の打算や情け、様々の絡み合い物語を織り上げる様が素晴らしい。
やけに笑えるシーンあり、袖の下に刃物を隠した様な剣呑な手練手管に冷や汗タラリな場面もあり、すんなりと美しい女性のかたちに見ほれるシーンもあり…見所満載。
名監督と名高いのも納得した。
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